気象庁によると、日本には噴火する可能性のある「活火山」は、海底にある火山も含めて111あります。この数は世界全体の7%にあたります。日本は火山の多い国ですが、そもそも、火山はどのようにして起こるのでしょうか?
東京大学非常勤講師の左巻健男さんが、著書『面白くて眠れなくなる地学(PHP文庫)』(PHP研究所刊)から一部抜粋してご紹介します。
火山の噴火が起こるメカニズム
地球内部には、高温のためどろどろに融けた岩石(マグマ)があります。マグマは地表近くに上昇し、いったんマグマ溜まりに蓄えられた後、地下の割れ目など弱い部分をつきやぶって地表に噴き出します。
マグマは、深さ数10〜2900キロメートルのマントルのなかでも、比較的浅い部分にある上部マントルでつくられると考えられています。ちなみに、地球の内部はとても熱いのですが、上部マントル(数10〜数100キロメートル)のすべての岩石が融けているわけではありません。
マグマができるしくみについては、いくつか説があります。
1つは、「水の混入による
引用・左巻健男[著]『面白くて眠れなくなる地学』PHP研究所
もう1つは、
マグマ溜まりは、地殻とマントルとの境界から火山の地下数キロメートルまで、広く存在する可能性があるといわれています。
マグマが、マグマ溜まりから地表に噴き出す一連の現象を「火山活動」と呼びます。マグマから発生した気体の圧力によって大爆発、つまり噴火が起こるのです。このとき火口から溶岩(約1000〜1200℃)が流れ出す他に、火山弾、火山レキ、火山灰などが火山ガスとともに噴出します。
噴火の前には、地下で岩盤が破壊されて地震が頻発したり、マグマやガスの膨張により山体が隆起したりするなどの現象が見られることが多く、ある程度、噴火を予知することができます。
二酸化ケイ素の割合がすべて
火山活動の様子は、マグマの粘り気や含まれるガスの量などによって違いがあります。マグマには、二酸化ケイ素という物質が含まれます。二酸化ケイ素の結晶体として代表的なのは、「
火山活動の様子は、マグマの粘り気や含まれるガスの量などによって違いがあります。マグマには、二酸化ケイ素という物質が含まれます。二酸化ケイ素の結晶体として代表的なのは、「
引用・左巻健男[著]『面白くて眠れなくなる地学』
PHP研究所
マグマに含まれる二酸化ケイ素が多いほど、溶岩の粘り気は大きくなり、粘り気の大きい溶岩ほど、高く盛り上がって傾斜の急な火山になる傾向があります。二酸化ケイ素の割合が低く粘り気が小さいと、溶岩はさらさらと静かに流れて傾斜のゆるやかな火山になりやすいのです。
噴火の仕方も、二酸化ケイ素の含有量によって変わります。二酸化ケイ素の割合が低いマグマは、ガスが抜けやすく比較的静かな噴火になりやすいのに対し、二酸化ケイ素の割合が高いマグマは溶岩の粘り気が増すとともにガスが抜けにくく、爆発的に噴火する傾向があります。さらに溶岩の粘り気が大きくなると、溶
岩が固まったまま隆起してドームをつくったり、火砕流(かさいりゅう)を発生させたりするようになります。
引用・左巻健男[著]『面白くて眠れなくなる地学』PHP研究所
日本の火山の多くは、マグマに二酸化ケイ素を多く含んでおり、爆発的に噴
火するタイプに該当します。昭和新山(しょうわしんざん)
と平成新山(へいせいしんざん)(1990年に雲仙普賢岳が噴火し、その結果、普賢岳より高いドームが誕生)は、どちらも二酸化ケイ素を多く含むマグマによってつくられた火山の典型です。
紹介した本はコチラ
タイトル:
面白くて眠れなくなる地学
(PHP文庫)
著者:左巻健男
出版社:PHP研究所
定価:825円
全国書店等にてお買い求めいただけます
著者プロフィール
左巻健男(さまき・たけお)
1949年生まれ。栃木県出身。東京大学非常勤講師(理科教育法)。
千葉大学教育学部(理科)卒業。東京学芸大学大学院修士課程修了(物理化学・科学教育)。中学・高校の理科教諭を26年間務めた後、京都工芸繊維大学教授、同志社女子大学教授、法政大学教授を歴任。2019年より現職。専門は理科教育(科学教育)・科学啓発。
『面白くて眠れなくなる物理』『面白くて眠れなくなる化学』『面白くて眠れなくなる理科』(以上、PHP文庫)、『新しい高校地学の教科書』『新しい高校化学の教科書』(以上、講談社ブルーバックス)、『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社)など単著・編著多数。