【ニュースがわかる2024年10月号】巻頭特集は「発明が世界を変える」

111の活火山、日本に連なる【ニュース知りたいんジャー】

8月に噴火した小笠原諸島の海底火山からと見られる軽石が各地に流れ着き、漁業や観光に影響を与えています。10月には、熊本県の阿蘇山が噴火しました。日本は「火山国」と言われますが、どのぐらいあるのでしょうか?【下桐実雅子】

◇日本に火山はどのぐらいある?

 気象庁によると、日本には噴火する可能性のある「活火山」が、海底にある火山も含めて111あります。これは世界全体の7%にあたり、日本は火山の多い国です。活火山とは「おおむね過去1万年以内に噴火した火山」と「現在活発な噴気活動のある火山」を指します。
 火山研究の進歩にともない、定義も変わってきました。数千年にわたって活動を休止した後に活動を再開した火山もあり、世界的にも活火山をより長い期間で考えるようになりました。
 111の活火山のうち、噴火すると人や社会への影響が大きいと考えられる50の活火山は、気象庁が「常時観測火山」としています。噴火の前ぶれをとらえるために、地震計や監視カメラなどの観測機器を備え、大学などからデータももらい、火山活動を24時間態勢で観測・監視しています。

◇日本はどうして火山が多いの?

 火山は地球の奥深くから噴き出した溶岩や火山灰などが積もってできたものです。火山の地下深い場所には地球の奥深くにある岩(マントル)の一部が溶けてドロドロした「マグマ」がたまっています。これが火山から噴き出す(噴火)と、溶岩と呼ばれるようになります。火山ガスや石、火山灰も噴き出します。
 マグマができやすい場所に火山がたくさんあります。地球の表面は十数枚の厚いプレート(岩の板)に覆われていますが、プレートとプレートがぶつかり合うところはマグマができやすいです。日本列島はプレートとプレートがぶつかり合う境界の近くに位置しているため、火山が多くなっています。また、海底からマグマが噴き出す場所や、マグマがつくられ続ける「ホットスポット」にも火山ができます。
 噴火が起こると、さまざまな損害を与える火山ですが、温泉や地熱エネルギー、美しい地形や湖、野菜などがよく育つ大地などの恵みももたらします。

◇海底にも火山があるんだね?

 陸の上だけでなく、海にも火山がたくさんあります。太平洋の底には海底火山が連なるところがあります。海の底では噴火しても、海水の圧力があるので、陸上よりは大きな噴火になりにくいです。
 海底火山が噴火すると島ができることがあります。陸の火山と同じように溶岩などが出てきて、これが固まると海底の山が大きくなります。これを繰り返すと、山の頂上が海の上に出ます。これが島になります。東京の南に位置する伊豆大島やアメリカ・ハワイにある島々は海底火山からできた島です。
 東京から約1300㌔㍍南にある小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火でも、新しい島ができましたが、だんだん海に沈んで小さくなっています。噴出した軽石や火山灰の量などから、噴火の規模は戦後最大級と見られています。軽石が遠く離れた沖縄県や鹿児島県などに流れ着き、漁に出られなくなるなどの影響が出ています。

◇火山の警戒レベルってなに?

 火山の噴火にともない、生命に危険を及ぼすような大きな噴石や火砕流などが、短時間で火口周辺や人の住む地域に到達すると予想される場合などに、気象庁は噴火警報を発表します。
 8月13日に海底噴火が始まった海底火山、福徳岡ノ場には8月16日、今後も活発な噴火活動が続く可能性があるとして、周辺海域での警戒を呼びかける噴火警報が発表されました。
 また、48の火山では住民らがとるべき対応を5段階で発表する噴火警戒レベルもあります。10月20日に噴火した阿蘇山(熊本県)は、警戒レベルが2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げられ、火口から半径約2㌔㍍以内に入るのが禁止されました。活動を続ける鹿児島県の桜島、9月に5000㍍を超える噴煙が観測された諏訪之瀬島もレベル3です。

◆噴火警戒レベルと火山

レベル5=避難
レベル4=避難準備
レベル3=入山規制(阿蘇山)、諏訪之瀬島、桜島)
レベル2=火口周辺規制(口永良部島、薩摩硫黄島)
レベル1=活火山であることに留意(浅間山、富士山など)

◇大きな被害もあったんだね

 1990年11月に198年ぶりに噴火した雲仙・普賢岳(長崎県)では、翌91年6月に大火砕流が起こり、43人が犠牲になり家屋も焼失しました。火砕流とは、高温の火山ガスと火山灰などが混ざり合い、高速で斜面を流れ下りる現象です。日本で最も犠牲者が多い火山災害は、1792年の雲仙・普賢岳の噴火です。噴火の後に地震や津波も起き、約1万5000人が亡くなりました。
 2000年3月には有珠山(北海道)が噴火しました。地震などの予兆があり、北海道大学の観測データなどから事前の避難が呼びかけられ、犠牲者を出しませんでした。同じ年の7月、三宅島(東京)が噴火し、火山ガスが噴出したため住民全員が避難する全島避難となり、これが5年近く続きました。
 14年9月に起きた御嶽山(長野県、岐阜県)の噴火は、マグマの噴火ではなく、マグマの熱で地下の水が沸騰して起きる水蒸気噴火でした。登山者ら63人が噴石にあたるなどして犠牲となり、戦後最大の火山災害になりました。この災害をきっかけに、気象庁が噴火速報を発表するようになるなど、情報発信の仕方が見直されました。

(2021年11月17日掲載毎日小学生新聞より)