落語には食べ物を食べる噺がたくさんありますが、この「ちりとてちん」ほど、おいしそうに食べる表情とまずい表情とを対比させる演目はありません。どちらも英語になると、より豊かな表現が生まれるようです。(「Newsがわかる2023年5月号」より)
【英文】
Since a planned party was canceled, the old man invites his neighbor Kin-san to his house. Seeing Kin-san overjoyed with the food and sake, the old man tries to find something for himself as well, only to find tofu that was completely spoiled. At first, he thinks of throwing it away. But then, he decides to sprinkle some red pepper on it, call it “Chilitotechin”, and show it to his other neighbor, Roku-san. What would Roku-san, who always pretends to know everything, say about it?
【和訳】
横町の隠居さん、予定していた宴会が取りやめになったため、あまった食事とお酒を近所の金さんにごちそうする。金さんが大喜びしている姿を見て、自分も何か食べようと隠居さんは(台所で)豆腐を探すが、出てきた豆腐はドロドロに腐っている。はじめは捨てようとするが、これに七味をかけて(かき混ぜた上で)、「ちりとてちん」という名前を付けて、近所の六さんに見せてみようと思い直す。いつも知ったかぶりをする六さんは果たして何と言うのか?
「ちりとてちん」の噺を英語で表現する中でも、日常会話で使えるセンテンスはたくさんあります。特に大事なものを見ていきましょう。
最初、金さんが大げさにごちそうをほめる時など、英語には日常会話でもほめ言葉のバリエーションがたくさんあります。Delicious(デリシャス)以外にも、例えば「初めて食べました」というのも「珍しい」というほめ言葉になります。
日本語の場合、おいしいはいいとして、「ヤバい」「スゴい」といった何にでも使える表現になりがちです。
テレビ番組などのグルメリポーターになったつもりで、Fantastic(ファンタスティック)、Lovely(ラヴリー)、Beyond imagination(ビヨンディマネイション)などいろんな表現を試してみたら、相手も喜ぶかも!
知ったかぶりの六さんを試すために、腐った豆腐に七味をふりかけ「ちりとてちん」という名前を付けます。そして「台湾土産でもらったものだということにします」。
金さんはお世辞が上手なタイプ。六さんは口が悪くお世辞が言えないタイプ。会話していて気持ちがいいのは金さん、本音がわかりやすいのは六さん。あなたはどちらのタイプがお好きですか?
隠居さんたちは六さんを試すため、腐った豆腐に「ちりとてちん」という不思議な響きの名前を付けます。これ、基になっているのは「口三味線」といって、三味線の音を言葉で表したものです。三味線の場合、「チントンシャン」とか「チンチリレン」というような言葉でお稽古をするんだそうです。
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