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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミスト2023 WEB【桐朋女子中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は桐朋女子中学校を紹介します。

通知表はなし、時間割も自分で作る 学びたいことを学びたいだけ学べる学校

<3つのポイント>

①対話を通じ、生徒一人ひとりの個性を尊重し活かす教育

②多彩な理科実験を通じ、過程に寄り添い、本物に触れる教育を実践

③大学レベルの実験を経験できる「化学実験実習」が人気

個性を尊重し合い、多様性を育む校風が〝自分らしさ〟を大切にする心を培う

 Learning by Doing──。実践や経験から自らの体を通じて感じ、知識や感性を高め、創造力あふれる女性の育成を教育目標に掲げる桐朋女子中学校・高等学校。個性や多様性、そして〝自分らしさ〟を大切に新しい未来を作り出すエネルギーあふれる女性を数多く輩出してきた。インテル(株)やギネスワールドレコーズジャパン(株)などの外資系企業でトップとして活躍したOGもいるという。

 個性や多様性を重視する姿勢は生徒の評価にも表れる。同校に通知表はない。代わりに各教科の取り組みを生徒と教員で確認し合う「面談ノート」を導入している。数字や記号だけの評価伝達ではなく、一人ひとりと向き合い、良い点、努力が必要な点を、対話を通じて生徒と教員が共有し、次の学びへとつなげていく。高2・3になると時間割は自分で作る。このため同じクラスに文系、理系、芸術系の生徒が共存し、様々な個性と出会うことになる。これらも同校の校風ともいえる、他者の個性を尊重し合う〝多様性〟を自然と育む一因になっているようだ。

スポーツや行事も盛り上げる広いグラウンド。屋上には天文ドームが

〝本物に触れる〟を学びの中心に実験を数多く取り入れる中学の理科教育

 過程に寄り添う、本物に触れる教育が伝統の同校。理科では観察やデータ収集をじっくりと行う本格的な実験を数多く経験させる。そのうえで学びを言語化してまとめることを徹底し、真の理解につなげていく。

 中1の理科では、物理、化学、生物、地学の4分野を総合的に学ぶことで理科全体への興味を喚起させる。実験器具の扱い方、操作や注意する点を一から学ぶごとも特徴だろう。例えば、ガスバーナーは一度分解し、仕組みを理解することからスタートするという。その上で、中2では化学と生物を、中3では物理と地学をさらに詳しく学ぶことで高校での学びにつながるようにしている。

 「中2では週2時間ある化学の授業で、年間15回程度の実験を行います。準備から実験まで3人一組で行い、全員が手を動かし協働できるよう配慮しています」と化学科の山方美絵教諭。

 中1では沸点の違いを利用して赤ワインからエタノールを分離する「ワインの蒸溜」の実験を行う。実験中に観察したことや気づいたことを全てノートに記録し、それをもとにして「原理」を考えて自分のことばでまとめていく。これは理科に限らず日頃から物事の手順、結果、考察などを体系的にまとめる力を培っていくことが狙いだ。