新年度が始まり、読者のみなさんは新しい生活に慣れてきましたか。5月の連休明けは、緊張による疲れなどがどっと出やすく、心や体の調子がすぐれなくなることがあります。そんな不調は「五月病」とも呼ばれています。どうして起きるのでしょうか。子どものメンタルヘルスにくわしい「はるの木こどもクリニック」(神奈川県横浜市)の小児科医、斎藤陽院長といっしょに考えます。
「五月病」はメディアで取り上げられ、1968年に流行語になりました。きびしい大学受験をへて入学した新入生が燃え尽きて、やる気が出ない状態を指していたことが始まりのようです。ただし、斎藤さんは「『五月病』は5月ごろに、心身の不調を訴える症状の総称につけられた言葉で、病気の名前ではありません」と言います。
4月は、学校に通い始めたり、学年が上がったりして、子どもたちを取り巻く環境が大きく変わります。新しい人間関係が始まり、生活のリズムが変わります。「がんばるぞ!」と気持ちが張りつめ、新しい環境に慣れようと、ストレスをためることもあります。5月の連休をはさんで、緊張の糸が切れてしまい、環境になじめない状態のことを指しているそうです。
朝に起きられない、頭が痛い、おなかが痛い、めまいがする、はきけがする、疲れが取れない、眠れない、食欲がない――など、いろいろな症状があります。そういった不調から、「学校に行きたくない」といった言葉も出てきます。
症状が起きる原因は、生きるために必要な体の動きをコントロールする「自律神経」のバランスがくずれてしまうことです。自律神経は、自分の意思では調整できない神経で、体温や呼吸、睡眠など、元気に生活できるようなはたらきをしています。斎藤さんは「自律神経は、ストレスや緊張、不安などでバランスをくずしやすくなることが知られています。一度バランスをくずすと、元気にすごせないなど、さまざまな症状が出てきます」と説明します。
斎藤さんは「環境の変化による緊張は、だれでもあります。保護者や周囲の大人には、ふだんからお子さんの顔つきや表情、学校での話をするかなどに、注意を払っていただきたいです」と呼びかけます。具体的には、元気がなくなっている、集中力が切れている、目に力がない、学校の話をしなくなった、笑顔が減った――などです。
変化に気づいた時には、「できるだけふだん通りの会話をしてほしい」と斎藤さん。「本人に直接、理由を聞くようなことはさけた方がいいです。学校の先生にも様子を聞いてみてもいいでしょう」とアドバイスしてくれました。
五月病になりやすいのは、ストレスをためこみやすい人、まじめな人、がんばりすぎる人に多いそうです。
斎藤さんは「子どもにとって大事なのは、睡眠と食事です」と強調します。寝る2時間前から、スマートフォンを見ないなど、眠る準備も大事です。週末や休日でも寝る時間と起きる時間をずらさない、バランスよく食べるなどして、生活のリズムを保つのが大切です。
ストレスの感じ方は個人差もあり、さっと抜け出す子もいれば、ずっと感じている子もいます。最近は、何がイヤか分からない子も少なくないそうです。斎藤さんは「話を受け止めてあげるだけでも、子どもは安心します。がんばりすぎないで」とも言います。
不調がある場合、早めにかかりつけ医にみてもらいましょう。良くならない場合は、専門の医療機関の受診をおすすめするそうです。ストレスや緊張状態が長引くと、よくなるまでに時間がかかってしまうからです。
「五月病」は、いろいろな状況で起こりえます。進学、進級という環境の変化にともなう負担を軽くしようと、兵庫県朝来市は今年度、公立小中学校の4月の1か月間について、5時間授業にする取り組みを始めました。「五月病対策」のめずらしい試みです。
朝来市教育委員会によると、小学1年生は6時間授業はもともとありません。小学2年生以上は6時間の日が週に数回ありました。4月は、家庭訪問などもあり、短縮授業が多く、5時間授業にしたとしても、1か月で減る授業の時間は6~8時間だそうです。そのため、夏休みを使うなど特別な埋め合わせをしなくても、文部科学省が示す授業時間数を確保できる見通しです。
担当者は「4月は、子どもたちにとっても、心身ともに負担が大きい時期です。ゆとりをもってすごすことで、少しずつ新しい環境になじんでもらい、いいスタートを切ってほしいです」と話しています。
(2026年5月13日毎日小学生新聞より)
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