私たちは店でお金を払って買い物し、店はお客さんが払ったお金から利益を出して商売しています。
ところが最近は、「モノを売らない店」が増えてきています。商品を売らずに商売できるなんて不思議ですね。実際どんな店なのか、2つの店を例に紹介しましょう。
日産自動車は2021年3月に、車の販売を目的としない「ブランド体験型店舗」を増やしていくと発表しました。「ブランド体験型店舗」とは、自動運転など、日産の先進技術や機能の魅力を伝えるための店です。お客さんは、店舗にいる「売らない」専門スタッフから車の説明を聞いて、60分以上試し乗りすることもできます。こんな店なら、今すぐ車を買う予定がなくても気軽に見に行けそうです。車を気に入れば次に新車を買う時の候補になりますし、買いたい時は近くの販売店を紹介してもらうこともできます。日産のブランド体験型店舗は、「将来のお客さんを増やす場所」なんですね。
2020年の夏にアメリカから日本に初進出した「b8ta(ベータ)」も、「体験型店舗」の一つです。普通の店は仕入れた商品を売って商売をしますが、ベータは商品を置くスペースに対して企業から料金をもらう、新しいスタイルが注目されています。ベータは企業から料金を受け取る代わりに、お客さんの行動や商品の関心度がわかるデータを提供し、製品の改良や販売の工夫に役立ててもらうのです。店内には、最先端の家電製品や珍しい雑貨、食品などさまざまな商品が並び、触って体験したり、その場にあるタブレット端末から詳しい情報を見たり、注文もできます。商品の代金が店ではなく、すべて企業に入るのもほかの店とは違う点です。
このように、店が積極的に物を売らないのは、お客さんに「商品の良さを知ってもらう」ことが目的だからです。その場で物を売らなくても商売になるなんて、おもしろい仕組みがあるんですね。(編集部)