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東証再編 世界を視野に【ニュース知りたいんジャー】

日本の株の取引を担う場となっている東京証券取引所(東証)の市場が、4日に再編されました。そもそも株や証券取引所って何? 知りたいんジャーが学びました。【長岡平助】


 ◇そもそも株って何なの?


 会社が事業をするために、お金を集める方法の一つです。お金を出すことを「出資」といい、出資した人たちは、出した金額に合わせた数の株を受け取り、その会社の持ち主(株主)になります。株主たちは会社を経営する人を決めて、任せます。会社の事業でもうけ(利益)が出ると、株の数によって分け前(配当)を受け取ります。事業がうまくいかず会社がつぶれると、株主が出したお金は戻ってきません。しかし事業のために会社が借りたお金を、株主が返す必要はありません。
 税金を扱う国の役所である国税庁によると、日本の会社約276万社のうち、約90%(2019年度)が株の仕組みで作られた株式会社です。


 ◇証券取引所は何をするところ?


 株は自由に売り買いできて、それを行う場が取引所です。売買の注文を取引所に取り次ぐのが、証券会社です。
 証券取引所で売買されるのは、株式会社のうち、会社の大きさや情報公開の条件をクリア(上場)した会社の株です。日本で最も規模が大きな東証に上場している会社は、3700社以上あります。
 上場していると、取引所で株を売り出してお金をもっと集められます。ただし、株を買い集めて会社を思い通りに動かそうとする人が登場することもあります。会社の方針を決める株主総会の投票は、「1人1票」ではなく「1株1票」だからです。株をたくさん持っていると、会社への影響力が大きくなります。


 ◇東証はどう変わったの?


 東証にはこれまで、最も基準が厳しい最上位の1部をはじめ、2部、ジャスダック、マザーズの四つの市場がありました。これらが4日から最上位のプライム以下、スタンダード、グロースの三つになりました。プライムは世界的な取引をする大きな会社向け、次のスタンダードは国内を中心にする会社向け、グロースはこれから伸びていく新しい会社向けという位置づけです。ちなみに1部からプライムに移った会社は、1部上場2176社のうち、84%にあたる1839社です。
 再編したのは、これまでの市場の分け方が「あいまい」だったためです。特に1部には、トヨタ自動車など世界的な会社から比較的小さな地方の会社まであり、最上位の意味が問われていました。そこでプライムでは上場や上場を続けるための基準を厳しくし、より選び抜かれた会社をそろえようと考えました。
 東証が扱う会社の時価総額(株の総数に価格を掛け合わせた額)は約714兆円で、世界5位です。世界最大のアメリカのニューヨーク証券取引所(約3220兆円)や2位のナスダック(約2753兆円)に遠く及びません。アジアで見ても、中国の上海証券取引所(約901兆円)に次いで2位です(2021年現在)。再編の背景には、東証がこれらとの競争で伸び悩んでいることがあります。再編で市場を分かりやすくすることで、海外を含めて株の売り買いをする人を増やすねらいがあります。
 しかし今回の再編では、例えば東証1部ではあったもののプライムの基準を満たしていない会社が、基準を満たすまでの計画書を出せば、プライムに移れるなどの対応がとられ、あいまいさが残るとの指摘もあります。


 ◇株が注目されるのはなぜ?


 株価には経済の様子が映し出されます。また株価は経済に影響を与えます。
 景気が良い時には、株価は全体的に上がります。商品の売れ行きが良くなり、働く人の収入が増えて株を買う人が増えるからです。また株価が上がると、株を持っている人は自分の資産が増えた気分になってお金を使うので、景気が良くなります。反対に、景気が悪い時には株価が下がり、株価が下がると景気が悪くなります。
 株価全体の動きを見るために、多くの会社の株価から計算して一つの数字を出しているのが株価指数です。よく使われるのが日経平均株価です。日本経済新聞社が選んだ225社の株価の平均で、定期的に入れ替えられます。今までの最高は「バブル経済」といわれた1989年に記録した3万8915円でした。その後、2009年に7054円まで下がり、現在は2万7736円(4月4日終値)です。
 ちなみに株価には世界情勢や天気、円とドルのような他の国の通貨との関係など、さまざまな事柄が影響を与えます。なぜ株価が上がったのか(下がったのか)を考えながらニュースなどに注目してみると、株がより身近に感じられるかもしれません。


 ◇株の値段が上がったり下がったりするのはなぜ?


 株が売り買いされた時の値段を、株価といいます。ものの値段は、みんなが欲しいと思うものは高くなり、欲しがらないものは安くなります。株も同様で、みんなが欲しがる株は高く、そうでない株は安くなります。
 株を買いたい人が増えるのは、例えばその会社の商品がヒットした時です。もうけが増えて株主の分け前も増えそうだからです。株を持つ人は、買った時よりも高く売ってもうけます。もっと高く売れるようになると思って、株を買う人も増えます。
 反対に商品の売れ行きが悪いと、株を売ろうとする人が増えます。もうけの分け前がなく、会社がつぶれれば株の価値がゼロになるからです。損が広がらないうちに売ろうとする人が増えます。一方で、株価がやがて上がると考えて、株価が安いうちに買う人もいます。(2022年04月06日掲載毎日小学生新聞より)