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スクールエコノミスト2024 WEB【恵泉女学園中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は恵泉女学園中学校を紹介します。

社会に光を灯すランターンたれ! キリスト教教育で培われる深い共感力

<注目ポイント>

①聖書、国際、園芸の3本の柱で主体性、多様性、協働性を育む

②自分と向き合い、発信し、共に生きる力を身につける「感話」

③国際理解を深める有志参加型プログラム

創立者河井道とキリスト教教育

 恵泉女学園の創設者である河井道は、宣教師サラ・スミスや新渡戸稲造に学び、キリスト教信仰による女性の連帯と友和、平和主義教育を主導した人物だ。『神を畏れ、人を愛し、命を育む』を教育目標に掲げ、創立以来、河井の意思は脈々と受け継がれる。世界に目を向け、平和を実現する女性になるために、自ら考え、発信する力を養うことを目指し「聖書」、「国際」、「園芸」という3本の柱を通して、主体性、多様性、協働性を育てることを大切にしている。

 同校の特徴的な教育の一つが「感話」だ。生徒が日頃感じたり、考えたりしたことを文章にまとめ、礼拝時にほかの生徒の前で発表する。中1では原稿用紙3〜4枚程度だが、高3では8枚以上書く生徒もいる。テーマは自由で、友人関係、理想の生き方、自分の悩み、哲学や芸術についてなど様々だ。高3のNさんはドイツ留学中にウクライナ戦争が始まり〈今までは世界のあらゆる戦争や紛争に見て見ぬふりをしてきて、今回の軍事侵攻で初めて戦争は現実にあるのだと認識した〉〈理想を持っていれば、たとえそれがすぐに実現しなくても、さらに悪い方向に行くことはないだろう〉と平和という理想を追い求める決意表明をつづり、発表した。

 このように自分の意見を書くことで自己と向き合い、内面を掘り下げると共に、生徒や教員の思いを日々聴くことで、新しい価値観に出会い、他者の心に寄り添う端緒ともなっていく。また、何を述べても受け入れられる環境があることは安心感、自己肯定感とともに他者への思いやりや優しさを育む大きな基盤となる。そして、多様な人々とともに生きるための共感力、人間力を育んでいく。本山早苗校長は、「本校の礼拝は毎朝25分です。中高生という多感な時期に自分と向き合う時間を持つことは、卒業後の人生においても大きな財産となります」と胸を張る。

国際理解を深める様々な有志プログラム

 同校の教育の柱の一つである「国際」(国際理解教育)の取り組みは、有志参加型プログラムが中心だ。グローバル社会で必要な英語力や主体性の醸成を目的とする。

 例えば、中3から高2を中心に夏休みの5日間行われるGlobal Studies Programでは、東京大学や東京工業大学、筑波大学などに在籍する留学生にリーダーになってもらい、英語でのディスカッションや自分の特技を披露するアクティビティ等を体験する。「特にアジアやアフリカなどからの留学生は、母国の発展に貢献する、という強い使命感を持って日本で学んでいます。彼らの目的意識が生徒たちにとっては大きな刺激になり、大学での学びの先を考えるきっかけにもなっているのです」と本山校長。さらに同プログラムには高1、2生を対象としたハイレベルのPathfinder Programもあり、ここでは、AIがもたらす影響といった社会的事案や、自分の個性と才能に着目しつつ、自身の人生とキャリアといったテーマについて議論する。

 また、「アジアの中の日本」という視点を身につけて欲しいとの思いから、アジア各国との交流にも積極的だ。昨年度3月にシンガポール研修を実施し、オンラインでシンガポール国立大学や付属高校の学生・生徒と交流を重ね、春休みに現地を訪問した。そこでは、アジア文化の多様性、アジアで働くこと、SDGsなどについての議論が交わされた。