スクールエコノミストWEB【東京農業大学第一高等学校中等部編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東京農業大学第一高等学校中等部を紹介します。

「一中一高ゼミ」が呼び起こす“青い炎” 学びの根源的な喜びが、生徒を変える

<3つのポイント>

① 外部コンクールへの出場者が増加中。積極性を増す生徒たち

② 生徒も教員も共に楽しむ「一中一高ゼミ」で、学ぶ喜びに出会う

③ 最難関大や医学部合格者を生み出す「Tゼミ」と「D模試」

外部コンクールへ積極的に参加 農大一高・模擬国連部の決起集会

 放課後、秋の柔らかな日差しが降り注ぐ明るい教室には、知らせを受けて集まった生徒たちで埋め尽くされていた。壇上で熱いプレゼンを繰り広げているのは、男女4名の生徒たち。先に行われた「全日本高校模擬国連大会」の出場メンバーだ。4名は後輩たちに向けて『模擬国連部同好会』の設立を呼び掛けている。

 同大会へは毎年2人組2チームが参加しているが、厳しい予選を突破して2チームとも本戦に出場したのは、同校初の快挙。4名は大会から帰るとすぐ、同好会の立ち上げを企画した。

 「この活動を継承していきたい」と、壇上で1人の男子生徒が訴える。「模擬国連に出場するためには基礎教養が大切。これを仲間と一緒に高め合うだけでも楽しい活動になる」と女子生徒も受け合う。「1人でも意思があったら行動してほしい」―教室は時折笑いの漏れる和やかな雰囲気に包まれていたが、4名の熱意は伝わってきた。

 進路指導部の桐生正史教諭は、「外部コンクールに参加する生徒の数は圧倒的に増えつつあります」と語る。例えば現在も「リアビズ高校生模擬起業グランプリ」に応募したチームの企画審査が通り、企業から30万円の融資を受けて、東京農大の教授の協力のもと、エミューのオイルを使ったフェイスパック製品の開発・販売を行っている。「近年の生徒たちに見られる積極性は、一朝一夕に身につくものではありません」と桐生教諭。その背景には『一中一高ゼミ』の存在がある。

模擬起業で実際に製品を開発・販売

一中一高ゼミが呼び起こす「学ぶ喜び」と「身体性」

 一中一高ゼミは「知を広げる」「知を深める」をテーマとした教員主催の特別講座。放課後等を利用して、毎月10講座程度開かれている。全日本模擬国連への参加も『もぎ模擬国連』という一つのゼミから始まった。その他『12〜15歳からの現代思想』『フィールドワークの達人になろう』『ロックンロール入門―レッチリを学ぶ―』など教員の個性が光っている。桐生教諭は「教員も学ぶ主体であり、学びを楽しんでいる。成果や結果など関係なく、学ぶ喜びを連鎖させたいという想いだけで始めました」と話す。

 参加は自由。「強制ではないところに意味があります」と桐生教諭。「ゼミのラインナップを見て興味を抱き、わざわざ教室に足を運ぶ。その“身体性”が重要です。ゼミが授業と同じ内容だったとしても、その身体性があれば、学びの吸い取り方、アウトプットの現れ方がまるで違うからです」。

 100%主体性だけで動いた結果、学びの根源的な楽しみに出会う生徒たち。4年前に始まった一中一高ゼミが少しずつ生徒の間に認知され、それと同時に、生徒の主体性や積極性が従来にも増して醸成されつつあるようだ。「生徒の中に宿った“青い炎”が外部コンテストとぶつかり合った時、ものすごく大きな駆動力となって現れる」と桐生教諭。生徒に見られ始めた積極性やそれに連なる成果は、ゼミに赴く「勇気ある一歩」から始まっているようだ。