スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は立正大学付属立正中学校を紹介します。

社会を疑似体験するR-プログラムが、すべての学びと生きる力をつなぐ
<注目ポイント>
①確かな基礎学力と応用力を培う数学の「グループ学習」
②毎朝のコラムリーディングで、自ら考え、表現する力を磨く
③逆算思考のキャリアデザインが「真に生き抜く力」を育む
基礎学力を培う立正流のグループ学習
得意・不得意の差が現れやすい科目といえば、数学だ。立正大学付属中学校・高等学校はこの問題にどう取り組むか。まず、全ての基礎となる「計算力」を重視し、毎週小テストを実施。計算への苦手意識を払拭する。また中1から習熟度別クラスを編成し、一人ひとりの理解度に即した授業を展開。さらにグループ学習を積極的に取り入れる。どのような生徒にも成果が見込めるからだ。
数学が得意な生徒の特徴は、教科書の例題以外の解法を思いつくこと。グループ学習により複数の視点で解法を発想し、共有することで、より深い学びへとつなげることができる。一方、苦手な生徒にとっては気軽に教え合う効用が大きい。数学科の小林護教諭は「分からなければその場ですぐに相談できる状態で授業を進めている。助け合いを機に成長する生徒は多い」と話す。
確かな基礎学力を糧に数学で身につけたい力は論理的思考力だ。例えば証明問題では、その命題が正しいという根拠を過不足なく網羅する必要がある。この“アイディアを通すための理由付け”という演繹的な作法は、同校独自の取り組み「R-プログラム」にも寄与している。
毎朝20分、自ら考え表現する力を育む
「R-プログラム」とは、Research(調べる)、Read(読み取る)、Report(表現する)の3つのスキルを伸ばす教育プログラムで、柱となる活動は中1〜高1で行う「コラムリーディング&スピーチ」だ。毎朝20分間のショートホームルームの時間を活用し、新聞の社説やコラム等を読み、調べ、自分の考えをまとめ発表する。各学年の目標は、中1「文章の書き方を身に付ける」、中2「自分の意見を持つ」、中3「自由な表現で意見を伝える」、高1「グループで意見をまとめる」。4年間を通じ3つのスキルを体系的に磨いていく。
例えば中2では、地震被災地の避難所のリーダーが書いたコラムを題材に「もし自分がリーダーだったら」と仮定し、支援物資をどのように配布するか考えた。避難所には同世代の子どもだけでなく、乳幼児、高齢者、障がい者など様々な人がいて、優先順位を決めるのは容易ではない。生徒は過去の事例を調べながら自分の考えをまとめ上げた。この時、数学で培った「根拠を示す力」が役立った。関卓朗教諭は「様々な立場を想像することで視野が広がる。R-プログラムを通じ、自ら考える力が着実に育まれている」と話す。

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