スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は三田国際学園中学校を紹介します。
サイエンス環境の拡充が開く新ステージ。ゼミの学びは探究心を無限に広げる
<注目ポイント>
①新しいラボ棟でロボティクスやデータサイエンス教育が本格化
②インターナショナルな環境でのサイエンス教育で論理的思考力を育成
③ISC、MSTC、ICの3クラスのゼミの学びで興味を深掘り研究する
教育の目標は「THINK&ACT」
不確実な未来を生き抜く力を養うために、「THINK&ACT」をキーワードに革新的な教育を展開している三田国際学園。「THINK」は、習得した知識をもとに論理的に思考することを、「ACT」はその思考を具体的な行動に移すことを意味する。これらを支えるのが、国際感覚を養う「インターナショナル」と論理的思考力を養う「サイエンス」という環境だ。
「インターナショナル」は、国際性豊かな学校環境で具現化されている。生徒の3割以上が帰国生であり、34名(2024年度)のインターナショナル教員がいる。クラスは一般生と帰国生で構成され、日常的に日本語と英語でコミュニケーションが行われている。この環境で、英語を話せない一般生も帰国生との交流を通じて実用的な英語スキルを身につけ、帰国生も一般生から日本語や文化を吸収するなど、互いに学び合う習慣が根づいている。
「サイエンス」においては、博士号を持つ常勤教員が、科学的アプローチの専門家として生徒の学びを支援している。全生徒が最初に履修する「サイエンスリテラシー」の授業では、身近な事象の観察から始め、問いを立て、仮説を検証する基本的なスキルセット(探究の作法)を習得する。情報収集→分析→仮説設定→アウトプットという、科学的アプローチに欠かせないプロセスを通じて、論理的かつ批判的な思考力を育成するのだ。
「科学的に物事を解明しようとする思考は、学年を問わず学校全体に浸透しています」とMST部長の辻敏之教頭はいう。「放課後、生徒たちがラボに集まり、互いの研究について質問したり、情報交換したりすることで、次々と新しいアイデアが生まれています。例えば、ある生徒は音楽会で、QRコードを利用した保護者向け入場管理システムを自発的に開発し、当日の入場者の管理を行いました。新しいアイデアを実現したいという生徒の意欲を学校が支援し、生徒たちと教員との信頼関係が構築されています。それが探究の推進力になっているのです」と分析する。
物事を論理的に捉える生徒たちは、教員に相談事をする際には、論点のポイントを明確にするため文書や企画書にする習慣が身についている。また新しいラボ棟の完成も予定されており、進化し続ける生徒たちのさらなる成長が期待されている。
ISCではリベラルアーツ教育が進化
生徒たちは入学すると、インターナショナルサイエンスクラス(ISC)とインターナショナルクラス(IC)の2つのクラス構成で学習をスタートする。
ISCでは、サイエンスリテラシーの授業で学んだ知識や科学的アプローチを生かし、中学2年から「基礎ゼミナール」で様々なテーマに関して研究者たる姿勢で学ぶ。研究分野は「言語と文学とアート」「自然科学」「コンピュータサイエンス」など文系理系を問わず多岐にわたる。生徒たちは自ら選んだテーマについて2年間研究を深める。そして高校1年から2年にかけては「Liberal Arts」に取り組み、より社会とつながり自分の興味をさらに突き詰めていく。テーマに応じて外部企業や大学、NPOなどの協力を得ながら研究の幅を広げていくのだ。
昨年は、「ダイエットによる摂食障害」を研究した女子生徒が、研究の一環でその分野の専門家である大学教授を訪問した。それがきっかけになってその教授を招いたセミナーを校内で生徒が自発的に開催し、協力関係が生まれたという。
さらに秋には、国際基督教大学との提携協定も結ばれた。これにより同校のリベラルアーツ教育が進化し、さらにフィールドが拡大されて生徒たちが様々な体験をする機会が増えることが期待されている。
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