家庭での学習習慣で「あと伸び」 花まる学習会代表・高濱正伸さん【やる気レシピ】

「メシが食える大人に育てる」。こんなコンセプトを掲げ、幼児から小学生向けに思考力の育成を重視した教育で注目されている学習塾「花まる学習会」。代表の高濱正伸さんに、子どもが「あと伸び」するために家庭でできることは何か聞きました。

――「あと伸び」する年齢とは何歳ぐらいですか。

◆中学生から高校生ぐらいです。小学校低学年の時にやんちゃだった子が、中学生になってから数学で全国トップクラスになったケースもあります。小さい頃から過剰に計算練習などをさせて、逆に学習意欲の芽を摘んでしまうことがないようにしてほしいです。

――あと伸びする子の特徴とは。

◆入試に限定して言えば「べき力(りょく)」を持っている子が強いです。やるべきことを淡々とやる力です。花まる学習会では漢検の問題を分割してテストをしているのですが、東大に入った子を分析してみると、みんな毎回96点以上取っていました。東大や医学部などに入った子はおおむね、宿題が増えても黙々とこなす傾向にありますね。例えば、名文を書き写す練習でも誤字脱字がなく、きちんとできるのが「べき力」です。

――「べき力」はどうすれば身につくのでしょうか。

◆家庭の習慣が大きいと思います。例えば、朝6時半から宿題をするなど決まった時間に勉強するという習慣がつけば、「べき力」は定着しやすくなります。小学1年生の4月からが勝負です。そこで習慣づけられるかどうか。親子で一緒に本を読むとか、学校で習ったことを子どもに発表してもらうということでもいいと思います。

――子どもがもう小学1年生を過ぎている場合、何か方法はありますか。

◆「学年変わり法」というのもあります。子どもにとって「学年」というのは大きな意味を持ちます。小学2年生の子に「きみ、1年生?」と間違って言おうものなら「違う、2年生だよ!」とすぐに言い返します。それぐらい学年変わりは大きな出来事なので、そのタイミングで、例えば「今度から4年生になるんだから宿題をする時間を決めようね」と約束する。その時大切なのは、真剣な顔つきで威厳を持って言うことです。

――小学校の高学年や中学生になると反抗期で親の言うことを聞かなくなります。

◆親の言うことは聞かなくても、「外」の大人の言うことには意外と耳を傾けるものです。そういう大人を一人見つけるのがポイントです。塾の先生でも、サッカークラブのコーチでも、ピアノの先生でも、この人の言うことならちゃんと話を聞くという人に、こっそり「勉強の大切さを諭してやってもらえませんか?」と頼んでみましょう。もちろん子どもには内緒で。

――他に「あと伸び」する子の特徴はありますか?

◆本をたくさん読んでいる子です。読書は受験にとどまらず、大切です。私はさまざまなジャンルのトップを走る方にインタビューしましたが、みなさんに共通しているのは、本に没頭した時期があるということです。

 読書が好きになる要因は3点あります。まず、幼い頃に親が読み聞かせをしている。二つ目は、両親のどちらかが「本の虫」であること。三つ目は、いい本に出合うこと。多感な時期には、いろんなことを考えます。なぜ友達が必要なのか。なぜ人を好きになるのか。なぜ勉強するのか。哲学的な問いや悩みにぶつかる。そこに「刺さる」本があれば、一気に読書に目覚めます。
 私の場合、中学1年生の時に出合った北山修さんの「戦争を知らない子供たち」。当時、大学生だったいとこが薦めてくれました。スポーツ選手やアイドル、タレントの愛読書を薦めてあげるのもいいかもしれません。

――中学受験のメリットは。

◆大学受験で現役合格率が高くなることです。中高一貫校に入れば、高校2年生までに全ての授業を終えて、高校3年生の1年間は受験対策をする学校が多いので当然合格率は高くなります。将来を考えれば、小学校の高学年に中学受験という真剣勝負にじっくり挑戦することは悪いことではありません。

――デメリットは。

◆塾に通えば山ほど宿題が出ます。本人が耐えきれないのに無理にやらせてしまうと逆効果になる可能性があります。【聞き手・三木陽介】

■人物略歴 高濱正伸(たかはま・まさのぶ)さん 

東京大卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会作問委員、日本棋院理事。1993年に設立した学習塾「花まる学習会」は思考力、作文・読書、野外体験を主軸に据える。「伸び続ける子が育つお母さんの習慣」(青春出版社)など著書多数。(2021年3月29日掲載毎日新聞より)