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スクールエコノミスト2024 WEB【女子学院中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は女子学院中学校を紹介します。

キリスト教教育で培われる平和精神。歴史授業は社会を立体的に見る眼を育む

<注目ポイント>

①自分の思いを自由に語れる「ごてんば教室」と「修養会」

②歴史事象を自分事として捉える高1の「歴史総合」

③意義深い平和教育「ひろしまの旅」

言いたいことを言い合える独自の校風

 1870年の創立以来、キリスト教精神を教育の根幹とし、自らに問う姿勢を持った女性の育成を目指す女子学院。「人の意見に真摯に耳を傾ける環境があることで、多面的に物事を見る目を育むことができる」と鵜﨑創院長が語るように、同校には教育の柱とも言える行事がある。それが中2の「ごてんば教室」と高3の「修養会」だ。いずれも校外の施設で行われる2泊3日の行事で、修養会では宗教、理想と現実、人間関係、生命倫理など様々なテーマに沿って各人が自由に思いを巡らせ、議論し、互いの意見を交換し合う。相手の意見を決して否定せず、聞く姿勢を大切にする気風が同校にはある。そのため、「どんなにおとなしい生徒でも人に聞いてもらえる、受け入れられる体験を通して自信を持って発言できるようになるのです」と中山美也子教頭は語る。

多様な視点で考察する歴史総合の授業

 この言葉通り、同校では授業中も活発な議論を繰り広げるシーンが多い。高1「歴史総合」の授業では、週に2時間、「世界の中の日本」という視点で近現代史を教えている。社会科の金井聖子教諭は、各時代における歴史事象を学ぶに当たり、生徒たちが当時の人々の立場になりきることで、多様な視点から意見を述べ、議論し、立体的に考察するスタイルを取り入れている。

 たとえば、昭和初期の歴史を学ぶ授業では、満州事変をどうしたら防げたかというテーマで議論を進めていく。まず生徒たちは、先生から当時の世界状況や日本経済、人々の暮らしぶりといった基礎的な知識のレクチャーを受ける。そして4つのグループ(政党政治家、軍人、工場労働者、小作人)に分かれ、それぞれの役割になりきってこの問いに向き合っていく。各人が過去の人々の心の動きに思いを馳せながら、どうしたら満州事変を防げたかを自由に想像し、考察していく。

 デジタルノートに記されたそれぞれの意見は、電子黒板で共有され、さらなる議論を深めるきっかけとなるという。一人ひとりが多面的な視点で掘り下げることで、単なる一つの歴史事象がある意味リアルな出来事として体現され、心に突き刺さる。そしてそれがさらなる疑問を生み、どうしてそうなったのかという根源的な問いへとつながっていくのだ。こうした体験を経た生徒たちは、授業が終わったあとも熱い議論を続けたり、関連する書籍を生徒同士で教え合ったり、この本や映画がおもしろかったと教員に薦めにいったりして、自発的な学びの姿勢を身につけていく。

 生徒たちの積極的な学びの姿勢や深い洞察力に心が震えることが多々あるという金井教諭は、多様な視点で意見を述べ、議論し合うスタイルを取り入れてから授業の進行がかえって楽になったと微笑む。「正解がないテーマだからこそ、誰でも自由に発言できるのがこの授業の醍醐味。自分の考えだけでなく、クラスメートの多様な意見に耳を傾けながら、歴史の出来事を自分事として受け止め、正解のない問いに対して考え続ける人になってほしい。そして学問としての正確な歴史の知識を持ったうえで、世界の人と議論できる人になってくれたら嬉しい」と期待を込める。