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スクールエコノミスト2023 WEB【東京電機大学中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東京電機大学中学校を紹介します。

伝統の理科・情報教育をベースにした新しい学びの「探究」を展開する

<3つのポイント>

①時代に合わせて進化する東京電機の理科教育と情報教育

②2021年度からスタートした「探究」が、同校の教育に新風

③生徒の心にぶれない軸を育む「5つの力」

日々の学びのいたるところに実践の機会を仕掛ける

 東京電機大学の創立は1907年。将来の日本が「技術立国」になるという夢を抱いた2人の青年技術者が、科学者と技術者の育成を目指して開校した。こうした背景は東京電機大学中学校の教育にも色濃く表れている。「『理科』と『情報』は、本校開校当初からの主要科目です。創立以来、培われてきた文化を軸にしながら時代に合わせて進化させていきたい」と、同校の平川吉治校長は語る。

 両教科のキーワードは「実践教育」だ。理科では、生徒が自分の手で実験道具を作ることからスタート。道具の原理や仕組みを理解し、理論の奥にひそむ根幹を学ぶためだ。手製の道具や用意された試料は各々が持つ「実験BOX」で保管し、これを携えて実験に臨む。高2までに行う実験・観察は100以上。経験を重ねるごとに好奇心はつのり、理科的センスにも磨きがかかっていく。

 情報の授業では、中1でプログラミング学習ロボット「こくり」を用いたプログラミングに挑戦する。ここで基礎固めを行ったのち、VBA、Pythonなどのプログラミング言語を習得する。目標は自分が作りたいプログラムを組み、人の心を動かす創造力や表現力を身につけること。平川校長は、さらに次のように続ける。「プログラミングはコンピュータの中だけの出来事ではありません。社会人になり、ビジネスプロジェクトを成功させる方法、人や組織を円滑に動かす方法を考えるにも、プログラミング的な思考は欠かせません。プログラミング学習を通じて、物事を動かす仕組みも理解してもらえたらと思っているのです」。

探究授業の一コマ

探究学習によって東京電機大中学の教育がパワーアップ

 同校伝統の理科・情報教育に加え、中核を担う教育として、2021年度からは新たに探究教育が加わった。課題認識→情報収集→分析・思考→まとめ・表現→新たな課題認識のサイクルをたどりながら、チャレンジ精神旺盛で自立した人間性と、「向上心」「視野の広さ」「冒険心」「共感力」「専門性」の5つの力を育むことを目標とする。

 探究の授業は週1コマ、中学全学年で行われている。ファーストステップとして、中1では「問いの立て方」を学ぶために、自分の身近に見つけた疑問や問題を考察していく。ある生徒が掲げた問いは、「自宅近所の公園について」。そこでは球技遊びが禁止されている。では、どのようなルールがあれば解禁できるかについて仮説を立て、自分なりの答えを導いた。「素朴な問いかもしれませんが、身近なことに目を向けて考える姿勢は、やがては社会の課題といったスケールの大きなものを捉える礎にもなります」と、平川校長は語る。

 中2では、中1での実践を発展させながら多角的思考を学ぶ。例えば、一つのテーマについて、ベン図やY/X/Wチャートといったシンキングツールを用いながら多様な視点から物事を考え、使えるものをピックアップするといった情報整理や考察方法を獲得。集大成となる中3では、卒業論文執筆に挑戦する。同校の探究では中1段階からレポートの書き方の習得にも注力しており、中1でひな形に沿って考えを文章化することから始まり、レポート作成の「型」を身につけていく。「本校には自分の興味をとことん突き詰めるタイプの生徒が多い。中3では、大学レベルの論文をまとめる生徒が出てくるのではないかと期待しています」。