【ニュースがわかる2024年12月号】今年もやります!2024年 重大ニュース

スクールエコノミスト2024 WEB【日本女子大学附属中学校編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は日本女子大学附属中学校を紹介します。

廊下の壁はまるでミュージアム。“森の中の学校”で展開される憧れの教育

<注目ポイント>

①本物の植物や生き物に触れながら学びを深められる、豊かな自然環境

②身体や心の成長に合わせた、段階的理科学習

③「書く」トレーニングを徹底して行い、真の思考力や表現力を醸成

緑豊かな環境で、多くの感動を味わう

 日本女子大学附属中学校は、周囲を豊かな自然に囲まれた“森の中の学校”だ。陽の光を受けてキラキラと輝く瑞々しい草木たち、心躍るような軽やかな鳥のさえずり、そして校舎を吹き抜ける爽やかな風……。生徒たちはあふれる自然を存分に感じながら、3年間、のびのびと学び、健やかに成長していく。

 「本校の大きな魅力のひとつが、この環境です」。そう語るのは、広報部主任の峯岸憲一教諭。「私たちは、実物を観察し、本物に触れる教育を大切にしています。なぜなら実物をしっかり観察し感じることで、机上の学びだけでは得られない深い洞察力や思考力が身に付くからです。3年間、豊かな自然のなかでたっぷりとフィールドワークを行い、実物でしか知り得ない発見や感動を味わいます」。

 美術の授業では“自分の木”を決めて細やかにスケッチする活動を行い、理科の授業では校内にあるスミレの自生地で約5種類のスミレを探し出すワークを実践する。

 まさに学校全体が学びの場。教科書を超えた体験が、濃く深く根付く環境がある。

落ち葉で焼き芋も作れる“森の中の学校”

成長に合わせた、段階的な理科の学び

 同校の理科の授業は、季節に寄り添うようにして行われている。命が芽吹く春には外で植物や生物を観察し、夏の暑い頃には屋内で地学を学ぶ。実りの秋になるとまた校舎を飛び出し、春に観察した植物の変化を見たり、木の実を収集するなどの活動を行う。

 「トウカエデの種子が飛ぶ様子を見て生徒たちが『わぁっ!』と声を上げたり、『くるくる回って面白いね』と楽しそうに話し出したりする。そういう瞬間を大切にしたいと思っています」。こう話すのは、理科の大越佳子教諭。「少しでも多くの感動を体験してもらいたい」と考え、特に中1では、屋外での活動を重視したプログラムを組んでいるのだ。中2では、中1で得た体験的学びをベースにした実験や顕微鏡を用いたより詳細な観察が中心に。さらに中3になると、ヒトや動物など生き物を学ぶ学習へとシフト。身体や心の成長に合わせて段階的に学びを深めていき、中3の3学期に集大成として、「ニワトリの解剖」に挑戦する。

 実物に触れる体験と段階的な学習のほかに、もうひとつ見逃せないのが、文章作成力を重視した教育だ。先生お手製のプリントやレポートで、毎授業必ず、見たものや気づいたことを言語化させている。また、正確な観察眼を養うためにスケッチも重視する。これらの積み重ねによって優れた観察力が鍛えられ、より深い科学的思考が生み出されるのだ。

 高校でも引き続き、実験や観察に力を入れた教育が行われる。中高6年を通して徹底的に繰り返される、体験・観察・言語化の営み。これによって、暮らしや人生を豊かにする、根源的な理科的思考や知識を花開かせる。