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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミスト2023 WEB【武蔵中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は武蔵中学校を紹介します。

「思い切って外へ、もっと先へ」 探究学習から見えてくる驚きの教育

<3つのポイント>

①中学の探究学習で自然に育まれる伝統の『自調自考』の学び

②生徒の心のエンジンを駆動させる高校の総合講座

③プロセスを尊ぶ教育がその先の人生の礎を築く

段階的に学びの〈型〉を作る中学・探究学習

 自ら調べ、自ら学ぶ『自調自考』を標榜する武蔵は昨年創立100周年を迎えた。自調自考の力を育むうえで、現地に赴き、本物に触れる学びが伝統だ。社会や世界とつながりながら自ら課題を見つけ、仲間とともに探求する姿勢を培う探究学習にも注力し、段階的に自調自考のいわば〈型〉を作り上げていく。「生徒自身がコースを決め、教員は見守ることに徹する」という中1の山上学校(林間学校)がその出発点だ。中2では群馬県みなかみ町で3泊4日の民泊学習を実施。事前に地域研究をし、現地で生活体験、自然体験、歴史学習に取り組む。さらに中3では第二外国語(独語、仏語、韓国朝鮮語、中国語)が必修だ。これは英語圏だけでなく、世界は異質で多様だということを生徒が実感し、より多角的な視野を持たせる狙いがある。希望者は高校でも中級、上級と学びを継続することもできる。これらの学習から「思い切って外へ、もっと先へ」と未知の分野へ挑戦する姿勢も段階的に培われていくのだ。

高校総合講座での奥会津在宅医療の体験実習

「歩く・見る・聞く・考える」精神で自分たちの研究を創造する

 中3の社会科での1年間を通じたテーマ研究で論文をまとめ、高校の総合講座では好きなテーマを選択し、グループでフィールドワークなど校外活動も行う。10代のうちに試行錯誤を繰り返しながら自調自考の〈エンジン〉を身につけられるかが、その後の人生を決定づけると考える武蔵。「専門分野の研究者でもある担当教員とともに探究する総合講座は、学問の基礎・本質を追究できる生徒の心のエンジンを駆動させるプログラムになっている」と加藤十握教頭は胸を張る。

 例えば『国境の島「対馬」を体験する』は、2004年度から開講され続け、対馬について歴史、生活、地域産業のほか地域活性化・過疎化・漂着ゴミなどの問題を学術的に探究。夏休みには実際に現地の家庭に民泊し、個々の研究課題の解決に向けて現場を歩いて見てまわり、話を聞き、考え、現地でしかなしえない貴重な体験をする。

 『SDGs実践講座 宮城・鳴子での林業体験』では、地域の林業とともに、端材や間伐材などの副産物を活用したバイオマスエネルギー事業を学ぶ。さらに災害時などの地域エネルギー問題、林業の後継者問題など地域の課題も含めて探究していく。

 『これからの医療を考える(都市・地方・海外の諸課題)』では、奥会津在宅医療センターの武蔵OB医師が取り組む地域医療、これからの国内外の医療などがテーマだ。前期は奥会津地域、後期は海外と国内の地域医療について探究する。「オンラインで海外と国内の医師、さらには奥会津の高校生ともつながり、それぞれの視点から地域医療の考察を深めたのは有意義だった」と担当の酒井良介教諭。さらに、どの講座も生徒が一方的に恩恵を受けるのではなく、「同時にお世話になった地域も活性化する双方向型活動を目指している」と加藤教頭。

 そのほか『「標本庫」学』『八王子水田稲作実習』『ドローン探究』などの講座でも校外のリソースも活用しつつ、生徒自らが研究を創造し追求していく。