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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミスト2023 WEB【東京農業大学第一高等学校中等部編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東京農業大学第一高等学校中等部を紹介します。

生徒が変わる、教員も変わる ゼミ型教育によるユニークな教育改革

<3つのポイント>

①一期一会の「一中一高ゼミ」で学ぶ意欲に火をつける

②学外コンテンスト参加を後押しする「SDGss研究会」

③難関大学を目指す「Tゼミ」「D模試」で進学実績が上昇

自由参加型のゼミでの体験で学びの駆動力、原動力が生まれる

 「夢の創造と実現」を目標に掲げる農大一中は、部活動が盛んだ。中学生の入部率は9割を超えており「陸上競技部&模擬国連同好会」「ダンス&英語同好会」など複数を掛け持ちする生徒も多いという。

 部活動以外にも、学ぶ意欲に火をつける仕掛けが多数ある。その一つが同校ならではの「一中一高ゼミ」だ。これは、放課後に開かれる自由参加型の講座で、毎月告知された内容を見て希望生徒だけが参加する。講座の内容は、「映画で見よう世界の歴史」「論理的思考力を養う詰め将棋」「コトバと音楽」「キャンプサミット」など教員の趣味の領域、専門的な学問の分野をベースとした幅広いテーマが揃っている。それ以外にも、物理好きな高校生が難関大学の難問に挑戦するゼミや、ウクライナ人生徒を迎えて自分たちにできることをディスカッションするゼミもあり、これらは生徒が発案した自主講座だ。

 参加は強制ではなく出入りも自由。学年の縛りもないので縦のつながりも生まれやすい。例えば、ゼミに参加した中学生が先輩に憧れて目標に向けて奮起するようになった例や、高校生がゼミに参加した後輩に教えることで自信をつけ、東大合格を目指して率先して勉強するようになった例もある。「学びの原動力は、憧れの先輩との出会いや楽しいと思える体験の中で生まれます。部活の仲間はメンバーが固定されがちですが、このゼミはいわばその場限りの出会い。でも、それが将来を左右する決定的な出会いになることもあるから面白い」と桐生正史教諭。

 よい影響は教員にも及んでいる。例えば、「アナと雪の女王」の主題歌を題材に、ネイティブの教員と社会科・音楽科の教員が行う講座では、日/英/中の3ヵ国語の歌詞の比較や、言語とリズムの関係を通して、様々な視点からの学びが展開された。「教員も教える人間である以前に、学ぶことが好きな人が集まっている。だから教科の枠を超えた学びは、教員にとっても大きな刺激となって思考が活性化し、普段の授業のやり方を見つめ直すきっかけにもなるのです」(桐生教諭)。

2023年冬に新校舎改築

生徒の声で生まれた「SDGs研究会」が学外での活動をバックアップ

 一中一高ゼミに参加して興味、関心の芽を育み、知識や教養を深めて学びの幅を広げた生徒は、自ずと学外コンクールにも目を向けるようになる。そこで桐生教諭ら「SDGs研究会」のメンバーを中心に、出場を考えている生徒たちをサポート。2021年には、起業体験をする「リアビズ高校生起業グランプリ」でエミューオイルを使用した顔用シートパックを販売した女子生徒3名のグループが金賞を受賞。2022年は、同じコンクールで高1の生徒6名が廃棄野菜から色を抽出したマーカーペンを製作して好評を博した。また、独自に昆虫食を研究したグループは、昆虫食の紹介動画を作成して「大学生による中高生のためのSDGs/サスティナビリティアワード」でミライノラボ賞を受賞。生徒からは「この経験で進路に対する意識が変わった」「いろんな人を巻き込んで作り上げる楽しさを知った」などの声が寄せられ、桐生教諭は「生徒の主体的な行動が学校を変える大きなうねりとなっている」と話す。