スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は目黒日本大学中学校を紹介します。
教室は失敗するための場 熱血教員の挑戦状に挑む生徒たち
<3つのポイント>
① 算数と理科をベースに文章読解力を問う「算理入試」を導入
② グループで行う「探究学習」で、問題解決力と協調性を養う
③ 国公立大学受験を前提とした先取り教育で受験対策も万全
「算理入試」の成績上位層が目を見張る成長を遂げる
日本大学の準付属校となって4年目を迎える目黒日本大学中学校高等学校。2019年に「算数1科」入試を導入し、翌年に理科を加えた「算理入試」をスタート。理数科目を得意とする小学生の注目を集め、2022年度は受験者数が大幅に増加。男子を中心に合格者の多くが難関校の併願組で占められていたという。広報主任で数学科の天野正貴教諭は、算理入試の特徴についてこう語る。「基本的には理科の題材をベースにしながら計算に落とし込む内容になっており、理科の用語を知らなくても解ける内容になっています。しかし、単純に算数や理科の知識を問う問題なら教科型の入試になってしまう。そのため、例えば2021年度には放射性物質の半減期を図示した資料から、答えだけでなく計算式や考え方を書かせたりして、教科横断型の文章読解力を試す内容にしています」と解説する。
天野教諭は、「算理入試を経て入学した生徒の成長は目を見張るものがある」と話す。中でも成績上位層は、もともと文章読解力が優れているため数学以外の教科でも頭角を現し、そうでない生徒も数学の成績だけは常にトップ層に食い込む活躍ぶりだという。「この教科なら誰にも負けないという自信をつけた生徒は、必ず後伸びするので心配はしていません。それに生徒たちの活躍の場は教室だけではなく、部活動や生徒会などさまざま。どんな子も自らの才能を生かし、輝ける場所が必ずあるのが、本校の大きな魅力ですね」。
目黒日大では、生徒の潜在能力を花開かせるさまざまな仕掛けも用意している。とりわけユニークなのが、中2・3を対象に配布される数学のプリント問題。その名も『挑戦状』。天野教諭のほか、数学科の教員が厳選した高校レベルの難問を解かせることで、日々の授業では飽き足らない数学好きな子どもたちの知的欲求をかき立てている。ほかにも、国英数の成績優秀者を対象とした「特別課外授業」もある。放課後の週1回70分、東大や国公立医学部入試に絞った少人数の指導で学びを深めていく。基礎学力の定着には、日々の授業で配布されるレベル別の演習プリントが威力を発揮。生徒一人ひとりの習熟度に合わせたきめ細かい指導は、各教員の熱意の現れだといえよう。
PDCAサイクルを取り入れた「探究学習」
目黒日大では、協調性や主体性をはぐくむ「探究学習」にも力を入れている。主なテーマは日本の伝統文化(中1)、日本の環境(中2)、SDGs(中3)。各クラス混合の6~7人がグループを組み、PDCAサイクル(計画→実行→検証→修正)を実行して一つのテーマを研究し、最終的にプレゼンまで落とし込む。テーマは「日本の和菓子」「温室効果ガスと海面上昇」「コンビニ袋削減」などさまざまだが、どれも中3で全員参加するオーストラリア短期留学の際、現地で日本のことを伝えられるようにする狙いがある。主体的に研究に励む生徒たちは、放課後にオンラインでメンバーと議論をしたり、公的機関や企業を自主訪問したり、学校外のフィールドワークで情報を得る術を身につけていく。「探究学習は、結果が全てではありません。むしろ挫折、失敗といった経験がのちの人生の大きな糧になるはずです。教室は失敗の場。子どもたちには決して失敗を恐れず、挑戦することに臆病にならないでほしい」(天野教諭)。
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