きっかけと習慣化を 精神科医・和田秀樹さん 【やる気レシピ】

精神科医・和田秀樹さん

 私立灘中高(兵庫)、東京大医学部という入試の最難関を突破した経験などに基づき受験関連の著書を多数世に出している精神科医の和田秀樹さん。「受験は要領」「数学は暗記だ!」など挑戦的なタイトルでも話題を集めてきた。「和田式」とも呼ばれる勉強法から「やる気」の引き出し方まで語ってもらいました。

 ――「暗記数学」の方法と狙いについて教えてください。

◆数学では問題を解けなかったら先に答えを見て解法を覚えることを勧めています。数学に限らず自分は勉強ができないと思っている子には、理由が二つあります。一つは計算力などの基礎学力がないこと。これはコツコツと身に付けるしかありません。もう一つは問題を見た時に解く方針が立たないことです。この場合1時間うんうんうなってみても解けません。でも、解法をたくさん覚えていれば、それらを組み合わせて思考できるようになります。

 勉強のやり方を知らないのに自分はだめだと思っている子が多い。問題を解けるようになることが勉強のやる気を上げる最も大切なことだと思います。

――数学の解法パターンはどれくらい覚えればいいのでしょうか。

◆文系なら500~600、理系は700~800がおよその目安です。一例を挙げると、「42×65+65×58」の計算問題の場合、「(42+58)×65=100×65」というパターンを覚えていると、ミスも減るし簡単に解けます。

――他にも入試で役立つ勉強方法を教えてください。

◆志望校の入試問題の傾向や配点を調べ、戦略を練ることが必要です。例えば、東大の理科1類の2次試験だと合格ラインは440点のうち最低で220点ぐらいなので、戦略を立てる。英語で120点中100点ぐらい取れる力があるなら、残りの科目で120点をどう取るか考える。苦手な科目をおろそかにしてはいけませんが、無理に伸ばそうとするよりも、得意科目を思い切り伸ばしてあげた方がいいと思います。

――苦手科目を作らない方がいいのでは。

◆戦略を立てることは、選択と集中をするということです。これは大人になってからも大切です。営業の仕事がうまくいかない時、「根性で1000軒回る」よりも、効果的なアポイントメントの取り方や、よりよいプレゼンテーションの仕方を学んだ方が賢明ですよね。受験勉強でいろいろとやり方を工夫してみた経験やノウハウは実は将来社会に出てから役に立つのです。それをきちんと大人が教えてあげるべきです。

――受験勉強では「復習」が大切だとおっしゃっていますね。

◆ドイツのある心理学者が実験で、意味のない三つのアルファベットの羅列を覚えさせ、時間とともにどれだけ忘れるかを調べたら、1日後には74%忘れてしまうという結果が出ました。脳は、必要がないと判断した情報は自然と忘れるようにできているのです。だから記憶に定着させるには復習が必要なのです。

――復習する際のポイントはありますか。

◆3段階の復習をお勧めします。まず、短時間でもいいので翌日に見直す。次に日曜日に1週間分の勉強を復習し、さらに月末に1カ月で進んだ範囲を見直す。記憶から消えてしまう前に頭に定着させるためです。記憶したことを引き出すことを意識したトレーニングも重要です。数学でベクトルの解法を50個覚えたらそれに関する過去の入試問題を何問も繰り返し解いてみる。歴史なら単に年号や出来事を覚えるのではなく、例えば過去問で「鎌倉時代に確立した武家政権の没落はなぜ起きたのか」という論述問題が出たなら、それに合わせた解き方をしてみる。

――勉強を習慣づけるコツはありますか。

◆子どもは小さい時、歯磨きを嫌がりますよね。でも習慣化すると、逆に歯磨きをしないと気持ち悪くなる。勉強もそうなるように大人が仕向けてあげればいいのです。きっかけづくりとしては、苦手科目よりも得意あるいは好きな科目から勉強させるとか、解法を教えてあげて問題を解ける喜びを体験させてあげるとか、いろいろあると思いますが、やる気や意欲を見せる瞬間が必ずあるはずです。子どもそれぞれで違うので親はその瞬間をしっかり観察することが大切です。【聞き手・三木陽介】

■人物略歴

 ◇和田秀樹(わだ・ひでき)さん

 1960年大阪生まれ。87年出版の「受験は要領」がベストセラーになって以来、受験関係の著作は200冊以上。90年に受験勉強法の通信教育「緑鐵(りょくてつ)受験指導ゼミナール」を開業。精神科医や心理学の視点から親教育にも力を入れている。(2020年11月23日付毎日新聞より)