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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【本郷中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は本郷中学校を紹介します。

部活動が拓いた新しい勉強スタイル チーム力は社会でも大きな成果を導く

<3つのポイント>

① 今年で創立100年の伝統校。「文武両道」が独自の教育を実現

② 同級生だけでなく、先輩・後輩の深い絆がさらなる成長を促す

③ 他者の優れている点に気づける感性をはぐくみ、実社会で発揮

先輩の語る生きたアドバイスが中学校生活の指針になる

 「文武両道」「自学自習」「基本的生活習慣の確立」を教育の三本柱として掲げる本郷中学校。特に「文武両道」について、同校は伝統的に運動部、文化部ともに部活動が盛んであり、学業以外の学校生活を充実させる象徴でもある。入試広報部長であり、数学科を担当する野村竜太教諭は「部活動を機にさまざまなきっかけやつながりが生まれていると考えています。例えば、先輩・後輩のつながり。部活動を通じて根付いている『教える・教えられる』という学年を超えた関係性は、学習面でもいかされています」と語る。

勉強も部活も頑張る生徒が多い

 こうした同校ならではのバックグラウンドから生まれた学習機会が年4回実施される「合同授業」だ。中1生と中2生がペアとなり、マンツーマンで先輩が後輩に対してアドバイスを行う。初回は5月下旬に行われる中間テスト前のタイミングだ。中1生にとって、中学に入学して初となる定期考査に備え、勉強の仕方や心構えなど、活発なやりとりがなされている。「中学受験では保護者や塾に見守られながら目の前の問題に向き合ってきており、入学直後は主体的に学習に取り組む習慣ができていません。先輩から話を聞くことで『中学生は、このように勉強するものなのだ』というイメージを具体的につかめるようになる」と野村教諭は話す。ときには中2生自身の失敗談が交えられることもある。身近な声で取り入れやすいからこそ、「このように勉強してみよう」といったように、中1生の心に響く生きた助言となっている。

 合同授業は年間を通じて同じペアで行われ、6月には同校独自の数学検定試験「本数検(本郷数学基礎学力検定試験)」について、10月は証明問題の書き方、2月に「日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)」の問題を一緒に解くなど、先輩の姿勢を間近にしながら、中1生は着実に学習意欲を高めていく。

数学力向上のエンジン「本数検」 切磋琢磨がもたらす向学心

 合同授業は教員たちをはじめとする大人に頼らず、生徒同士が関わり合いながら学びを深めていくことを重視しているが、このことは同校の教育の柱である「自学自習」にもつながっている。これをさらに引き上げる取り組みが中1から高2までを対象とした「本数検」だ。長期休暇明けに行われ、得点に応じて「級・段」が与えられる。出題範囲はその時点までに習った部分と幅広い。生徒は休暇中に苦手や弱点を自分自身で掘り起こしながら復習し、試験に臨む。高校では腕試しに上の学年の問題にも挑戦でき、学年にしばられずに力を発揮できる。過去には高1生が高3生向けの問題で満点を取ったケースも。「本数検」を実施するようになってからJJMOに挑戦する生徒も年々増え、数学の才能発掘の機会にもなっている。「この生徒のような成績優秀者に共通しているのは、真面目さよりも、ルールを突き破ってくること。『本数検』にしても、自分の学年の問題だけを解くことが通例なのに、そこを果敢に乗り越えてくる。本当に強いです。こうした生徒に意欲をかき立てられ、自分も続こうと研鑽する生徒が本校には大勢います」と野村教諭は語る。