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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【東京電機大学中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東京電機大学中学校を紹介します。

創立以来続く、実践を重視する理科・情報教育

<3つのポイント>

① 実践重視の理科・情報教育で、学びの礎を確立

② 「探究」とフィールドワークで課題解決力を育成

③ 「5つの力」を涵養し、豊かな人間力を形成

 今から115年前、日本が“技術立国”になる夢を抱いて、2人の青年が夜間学校を創立した。これが東京電機大学の始まりだ。「『理科』と『情報』は開校当初からの主要科目です。創立以来培われてきた文化を大切に、時代に合わせて進化し続けたい」。昨年4月に就任した平川吉治校長は、力強くこう語る。

 両教科における最大の特色が「実践教育」だ。まず、「理科」は実験回数が多い。高2までに行う実験・観察は実に100以上。そして実験道具は手作りにこだわる。仕組みや原理を理解することで、理論の奥に潜む根幹を知るためだ。生徒全員が「実験BOX」を持ち、そこに自分が作った道具や用意された試料を保管する。授業で幅広い分野の実験・観察に触れ、箱に道具が増える度に、生徒は理科のおもしろさや本質に気づき魅了されていく。その過程で理科的センスが養われ、理論を現実の現象と重ねてイメージすることができるようになっていくという。

 「情報教育」も実践にこだわる。中1で挑むのは、プログラミング学習ロボット「こくり(日販テクシードが開発したタブレット一体型ロボット)」を活用した簡単なプログラミング。「考える→実行→修正→再実行……」と、トライ&エラーを繰り返しながら、自分のアイデアが次第に実現化していく楽しさを体験する。そのうえでVBA 、Pythonといった高度なプログラミング言語へと段階的に進む。最終目標は、描写するために自分が考えたプログラムを完成させ、人を楽しませること。伝えたいことややりたいことを考え、その実現を目指すなかで、想像力や創造力、表現力が飛躍的に伸びていく。

中1情報の授業で使用する「こくり」

「なぜ」「どうして」がスタートライン 課題解決力を養う探究学習

 新たな取り組みも始まった。昨年度から独自教科「探究」を全学年に週1時間設置し、課題解決力の育成を図っている。

 まず挑むのは、問いの作り方だ。例えば釘とネジを配り、「問いを立ててごらん」と呼びかける。初めは戸惑っていた生徒も「5W1Hで考えてみたら」とヒントを与えると、「なぜ釘とネジがあるんだろう」「どのように使い分けているんだろう」と次々に疑問が湧き出る。 問いを作ることは、問題意識を持つこと。これが多様な視点や幅広い思考につながっていく。

 2年次は〈調べる〉、3年次には〈気づく〉をテーマに、グループワークやフィールドワークを頻繁に行う。自ら立てた問いの答えを追い求め、3年間の積み重ねを卒業論文にまとめて発表。その過程において、修学旅行などの行事や他教科の授業との連携も図り、さまざまな思考の実践の機会として位置づけていく。

 これらの取り組みによってはぐくまれる力は、解決できない問題や大きな壁にぶつかっても、別の視点から新たな問いを立てアプローチする課題解決力だ。同校では従来、理科・情報教育により探求心や実証精神を重んじてきた。これらが課題解決力と結びつくことによって、実際の社会問題を解決する応用力へと進化させることができる。