科学コミュニケーターの本田隆行さんと相棒のボットンが、日常のあちこちに潜む科学を探っていきます。今回は楽しむだけじゃない! 「動物園・水族館」の持つ意外な役割をナゾ解き!(「Newsがわかる2023年8月号」より)

こりゃいい“?”が浮かんだね。そもそも動物園や水族館って、何のためにある場所だと思う?
それはいろんな動物をたくさんの人に見て楽しんでもらうためだよ!
なるほど。でも実は“楽しむ”以外にもちゃんとした社会的な役割があるんだよ
へー! どんな?
日本動物園水族館協会によると「種の保存」「教育・環境教育」「調査・研究」「レクリエーション」という四つの役割があるんだって

タケノコを食べるジャイアントパンダのシンシン=東京都台東区の上野動物園で2023年4月
じゃあ、みんなに楽しんでもらうってのも、動物園や水族館の役割の一つということか
そう。人間が自然界について知り、学び、研究するためには、自然界のものに直接関わることが大事だよね。実際に生き物がくらしている場所で研究するのはもちろんだけど、 飼育して24時間観察するからこそ、解明できる詳細な生態だってある
なるほど〜! でも……勉強のために動物園や水族館に行く人もいるだろうけど、ボクみたいに見たり触れ合ったりするのが目的の“遊びに行く人”がほとんどじゃないの?
確かに。来場する目的といえば、子どもや孫のため、あとはデートってのも多いよね
でしょ? 人間は楽しいだろうけど……動物からしてみりゃ、毎日、ジロジロ見られて、まいっちゃわない?

老若男女でにぎわうアクアワールド茨城県大洗水族館のアシカショー=茨城県大洗町磯浜町で2023年3月
動物の気持ちになって考えるのも大切だよね。確かにもともと暮らしていた場所とはかけ離れた環境で、しかも毎日ヒトが近くにいるとなれば、落ち着いて過ごせない気がするのも無理はない
そうそう、ボクだったら、おちおち昼寝もできやしない
ボットンはロボットだからいいとして……。生き物を扱う施設だからこそ、扱う生き物の幸せをかなえるための“福祉”を考えることは、とっても大事だ
生き物の“福祉”を考える?
そう。生き物が肉体的にも精神的にも十分健康で幸せであって、そして、環境とも調和した状態をつくるために、何ができるのかを考えるってことだよ
野生で生活するのが一番幸せじゃないの?
生き物がどんな生き方をしていて、周りの環境とどうつながっているのか。詳しく生態を知るためには、それぞれの種について研究しないといけないよね。野生の生き物を守るためにも、飼育した上でしっかりと調べることは重要なんだ
それは確かにそうかも
あらゆる生き物は、みんなどこかで関係し合いながら生きている。そのバランスを支えているのが「生物多様性」なんだ。小さい頃に「本物の生き物」を見て、触れ合うことは興味を持つきっかけになるよね。生き物や環境について、地球規模の課題を考えられる次世代を育てるのも、動物園や水族館の役割なのかも
うーむ、動物園や水族館がそんな深い場所だったとは……。次に行く時は「キミの幸せって、どんな形?」って、生き物に問いかけながら、めぐってみようかな!

天王寺公園には、ヒトの生態について解説するパネルが設置されている。子どもたちの生き生きとした様子が観察できる仕掛け=大阪市天王寺区で2019年11月
イラスト:こばやし あさみ
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