社会人野球の頂点、都市対抗95年の歴史 18日開幕【ニュース知りたいんジャー】

社会人野球の頂点を決める第93回都市対抗野球が、18日から東京ドームで始まります。32チームが優勝チームに与えられる「黒獅子旗」を目指して競います。1927年の第1回から、太平洋戦争による中断をはさんで95年。後の大リーガーなど名選手たちが活躍してきた晴れ舞台です。出場チームの都市や企業・クラブの関係を知ることは、社会科の学習にもつながりますよ。【上鵜瀬浄】

◇どんな歴史があるのか教えて

 都市対抗が始まったのは、昭和の時代になったばかりの1927年です。当時は今の巨人のようなプロ野球チームはなく、早慶(早稲田大学対慶応大学)戦をはじめとする東京六大学野球や中学野球(今の高校野球)が人気でした。

 都市対抗、学校を卒業した野球人をもり立てようと、東京日日新聞(毎日新聞の前身)の記者が発案しました。アメリカ大リーグのチームが、ニューヨーク・ヤンキースのように都市名をつけているのをヒントに、卒業後の選手らが結成した各地の野球クラブの関係者に働きかけ、始まりました。

 第1回は12チームが出場。企業チームは、国鉄(今のJR)の地方管理局がチームを結成して臨みました。優勝は、日本の統治下にあった旧満州(中国東北部)の大連市を本拠地とする満州俱楽部。戦前にはこうした外地(海外の支配地域)のチームが5回も優勝しました。

◇優勝が多い地域はどこ?

 ENEOSと東芝だけで18回を占める神奈川県は、京浜工業地帯の中心地で、企業の活動が活発です。今は休部中や解散したチームで川崎市の三菱ふそう川崎と日本鋼管、横須賀市・日産自動車、藤沢市・いすゞ自動車も戦後優勝しています。ただ、神奈川県は2013年のJX―ENEOS以来、優勝から遠ざかっています。

 14年以降の8大会は、15年に4回目の優勝を果たした日本生命と18年初優勝の大阪ガスの本拠地、大阪市がある近畿地区▽14年に岐阜県大垣市・西濃運輸、16年に愛知県豊田市・トヨタ自動車がそれぞれ初優勝した東海地区▽19年初優勝の千葉市・JFE東日本と、優勝3回の埼玉県狭山市・Hondaの南関東地区▽昨年初優勝した東京ガスと、優勝2回のNTT東日本がある東京都--の4地区が、2回ずつ優勝しています。太平洋ベルト地帯のチームが目立ちますが、日本海側の秋田県にかほ市・TDKが06年に初優勝を成し遂げています。

◇戦後は?――オリンピックで選手が活躍したんだってね

 1945年の敗戦後、復興を支える「ものづくり」企業が働く人たちの楽しみにと、高校を卒業した選手を招き入れました。「真夏の球宴」と呼ばれ、とても人気がありました。これまで92回で最も優勝が多いのは、横浜市・ENEOSの11回、2番は川崎市・東芝の7回です。ENEOSの前身は石油元売り会社の日本石油で、チームが強くなっていく50~60年代はちょうど、エネルギーの主役が石炭から石油に交代する時期にあたります。東芝は初優勝した78年に日本初のワープロや病院で使う全身用CT(コンピューター断層撮影装置)を出し、情報化時代を支えてきました。

 都市対抗で活躍する選手はオリンピック(五輪)でも力を発揮しました。84年ロサンゼルス五輪で野球が「公開競技」に採用され、オールアマチュアで臨んだ日本は金メダルを獲得。続く88年ソウルで銀、正式種目になった92年バルセロナは銅、96年アトランタは銀とメダルを取り続けました。後に大リーグで活躍した野茂英雄投手(新日鉄堺)やヤクルト元監督の古田敦也捕手(トヨタ自動車)、大リーグを経験し今も中日で現役の福留孝介外野手(日本生命)ら都市対抗出身者が貢献しました。

◇応援合戦が面白いんだってね

 都市対抗では、ベンチの上のファン席に大きなステージが作られます。吹奏楽団の軽快なリズムに乗せて、チアリーダーが華やかに跳びはねたり、チームの地域が誇る郷土芸能として太鼓の演奏や高いはしごの上での芸が披露されたりと、魅力あふれる応援で相手チームと競い合います。くまモンをはじめ、ご当地のゆるキャラが登場することもあります。今大会では3年ぶりに応援コンクールも復活します。熱心なチームは特別電車や何台ものバスを仕立てて社員やファンが東京ドームに詰めかけ、社長から新入社員まで一緒になって熱い拍手を送ります。イニングの合間に、通路で名刺交換や商談が始まったりして、ビジネスの一場面が間近で見られるのも、社会人野球ならではの光景です。

◇選手はプロでも活躍できるの?

 都市対抗は全国12地区に分かれて31代表を決めます。各代表チームは、同じ地区で戦ったライバルチームから3人以内の補強選手を加えることができます。これで1企業のチームでなく、都市代表になるのです。補強選手は他のチームに招かれるほど目立つ実力があります。前年優勝チーム(今回は東京ガス)は予選が免除され、単独チームとして推薦出場します。これまで推薦出場チームで2連覇したのは、2013年のJX-ENEOSだけです。

 社会人は高校や大学、独立リーグからえりすぐりの選手が集まっていて、プロからも即戦力と期待されています。プロに移った選手では21年、阪神・中野拓夢内野手(三菱自動車岡崎出身)が新人でセ・リーグの盗塁王になりました。パ・リーグでも、大きな体から漫画「北斗の拳」の主人公ケンシロウのライバル、ラオウのニックネームを持つオリックス・杉本裕太郎外野手(JR西日本)出身)が本塁打王、ロッテ・荻野貴司外野手(トヨタ自動車出身)が最多安打と盗塁王のタイトルを獲得しました。みんな、東京ドームの晴れ舞台から飛び立ちました。今年はどんな選手が活躍するのか楽しみですね。

(2022年7月13日掲載・毎日小学生新聞)

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