日本で使うエネルギーを中長期的にどうまかなっていくのかをまとめた国の新しい「エネルギー基本計画」が10月22日、決まりました。私たちの暮らしに欠かせないエネルギーはどうなっているのでしょうか。知りたいんジャーが調べました。【田村彰子】
◇エネルギー基本計画って?
私たちの社会には、明かりなどをつける電気、物を運ぶための船やトラックを動かすガソリン、工場などで使うガスなどが欠かせません。エネルギーは、社会経済全体を支えています。しかし日本は資源が乏しいので、これまで石油などの輸入に頼ってきました。どこからどのような資源を持ってくるかなど考え、安定的に確保できるよう作戦を立てなければなりません。
2002年に成立したエネルギー政策基本法では、原子力発電の位置付けや、どの「電源」を優先するかなど、中長期的な指針を政府が定めることを義務づけています。それが、エネルギー基本計画です。おおよそ3年に1度見直され、初めての計画は03年につくられました。その後07、10、14、18年に改められ、新しく決まったのが6次計画です。
◇6次計画はどんな内容?
6次計画では、政府が掲げた「2050年までに、温室効果ガス(二酸化炭素=CO2=など)の排出量を実質ゼロにする」といった目標を達成するため、政策を示しています。風力や太陽光発電などの再生可能エネルギー(再)エネ)を主力の電源として「最優先」で取り組むと、初めて打ち出しました。
また、30年度の見通しも示しています。5次計画では、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を22~24%としています。これを、36~38%に引き上げるとしています。原子力発電は20~22%で、この二つを合計した、CO2の排出量が少ない「非化石燃料エネルギー」の利用を前の計画の4割強から6割に増やしました。
しかし19年度の実績では、再生可能エネルギーは18%で、「36~38%」の目標を実現するのはかなり大変です。
◇なぜ再生可能エネルギーが注目されるの?
再生可能エネルギーは、石油や石炭、天然ガスなどの有限な資源とは違い、自然界に存在するエネルギーです。太陽光や風力、水力、地熱などで、自然エネルギーと呼ばれることもあります。なくなることがなく、CO2を出さないことが特徴です。
日本のような狭い国土では、広い土地がいらなくて海の風を利用する洋上風力発電も期待されています。
2011年の福島原子力発電所の事故の後、再生可能エネルギーの拡大に取り組むドイツは、その割合が20年で45%を占めます。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、2050年のアメリカ、中国、インド、ヨーロッパの再生可能エネルギーは、1㌔㍗時あたり2~4円ぐらいの格安なものになるとされます。
◇電源構成って何のこと?
発電に使う電源には、石炭▽天然ガス▽石油▽再生可能エネルギー▽原子力――などがあります。総発電量に占める各電源の割合を示したものを「電源構成(エネルギーミックス)」と呼びます。
日本の2019年度の電源構成は、液化天然ガス(LNG)の火力発電が37%で最も多く、石炭32%、再生可能エネルギー18%、石油7%、原子力6%と続きます。日本はCO2の排出量が多い石炭火力発電の割合が比較的高くなっています。
6次計画では、この電源構成が議論になりましたが、自然エネルギー財団常務理事の大野輝之さんは「世界では、ほとんどの発電を再生可能エネルギーが担うという結論が出ています」と話します。国際エネルギー機関(IEA)の今年5月の報告書では、50年には再生可能エネルギーによって世界全体の電力の約9割がまかなわれると想定しています。
◇原発はどう扱われているの?
計画では毎回、原発の扱いが注目されます。2011年の福島原発事故までは、原発は他の電源に比べ安いとされ、国は利用を進めてきました。しかし事故が起き、「発電のコスト(費用)には安全対策費などは入っておらず、核燃料を最終的に処分するためには、いくらかかるかも分からないことが広く知られるようになった」と大野さんは話します。
今年7月に国の役所の経済産業省が出した試算では、30年の時点で最も安いと推計された電源は、原発から事業用の太陽光発電に変わりました。
発電時にCO2を排出しない原発は、温暖化対策として新設を求める声もあります。6次計画には「必要な規模を持続的に活用」と書かれていますが、新設については書かれていません。原発の割合は第5次と同じ20~22%です。そのためには、原発を27基動かす必要がありますが、現状では10基程度で、根強い反対があります。(2021年10月27日掲載毎日小学生新聞より)