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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

戦国の侍大将から故郷の治水家に転身②

象の鼻・天狗の鼻

「神様がつくったものに手を加えると罰があたる」。

佐賀平野の農民に伝わる言い伝えです。治水の神様は、洪水から人々の生活を守るだけでなく、川から飲料水や農業のための水を引く灌漑事業も多く行いました。

神様のつくった「石井樋(いしいび)」とは、石で造られた井樋(取水施設)を意味しています。茂安は、佐賀城下を洪水から守り、さらに佐賀平野を流れる嘉瀬(かせ)川から多布施川に生活用水や農業用水を引き入れるため、多布施川入口に様々な工夫を凝らして灌漑事業を行ったと言われています。その遺構と資料を頼りに、2005(平成17)年末、佐賀市大和町に石井樋が丹念に復元され、まるで神業のような茂安の水利技術が蘇ったのです。

そこに妙な石積みがあります。その形から象の鼻・天狗の鼻と呼ばれます。この構造物こそ、嘉瀬川の上流から運ばれてきた砂混じり水を逆流させて弱め、かつ浄化する水利システムです。嘉瀬川の流れを大井手堰にぶつけて逆流させ、二つの鼻に導かれた水はゆるやかに濾過されながら多布施(たぶせ)川に流れ込む。治水機能を備えた浄化装置と言えるでしょう。

約400年前、ここから引かれた水が、魔法のように佐賀平野を穀倉地帯に変えていったことが想像できます。※写真は佐賀市大和町にある「さが水ものがたり館」。成富兵庫茂安の生涯を紹介するコーナーがある。

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