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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

大谷選手、強さの秘密【ニュース知りたいんジャー】

2021年のアメリカ大リーグ(MLB)は、日本から海を渡って4年目の大谷翔平選手(27)が大ブレークしました。
投手と打者の「二刀流」が本格的に花開き、今シーズン46本塁打(ホームラン)と、投手として9勝を挙げました。単純には比べられませんが、アメリカの永遠のヒーロー、ベーブ・ルースと肩を並べる成績です。野球の最高峰で抜群の記録を残した大谷選手の秘密に迫ります。【上鵜瀬浄】

◇どんな子ども時代だったの?

 大谷選手は、スポーツ一家で育ちました。父・徹さんは社会人野球の三菱重工横浜(現三菱重工EAST)の外野手、母・加代子さんも同社のバドミントン選手でした。兄の龍太さんは現在、トヨタ自動車東日本の野球チームで活躍しています。
 大谷選手は小学生時代から、お父さんにつきっきりで野球を教えてもらいました。高校は岩手県の花巻東に進み、2年夏と3年春の2度、甲子園に出場。2年の時はヤンキースで活躍した田中将大投手(楽天)と並ぶ、高校最速の150㌔㍍をマーク。3年では大阪桐蔭の藤浪晋太郎投手(阪神)から本塁打も打つ活躍でした。3年の夏は岩手大会決勝で敗れましたが、アマチュア最速の時速160㌔㍍で話題に。すでに「二刀流」が始まっていたのです。

◇日本のプロ野球ではどうだったの?

 大谷選手は当然、プロ野球ドラフト会議の目玉になりました。しかし「大リーグしか考えていない」と話していたため、獲得をあきらめる球団が相次ぎました。そんな中、日本ハムは単独で1位指名。はじめは球団側と会おうともしませんでしたが、30㌻もの海外進出に関する資料を示されたり、二刀流起用のプランを持ちかけられたりしました。指名から約1か月半後の2012年12月、日本ハム入りを明らかにしました。
 栗山英樹監督は、大谷選手との約束だった「二刀流」で起用しました。13年5月には投手として157㌔㍍をマークし、6月には初勝利。7月には初本塁打を記録。高校生出身新人の初勝利・初本塁打は、1967年の江夏豊投手(広島など)以来、46年ぶりの快挙でした。その後も日本ハムのエースとして15年には15勝(5敗)して最多勝と最高勝率など三つのタイトルを獲得。16年には当時最速の165㌔㍍をマークするなど3年連続2けた勝利しました。打者としても104安打(ヒット)、22本塁打と、二刀流としてチームに貢献し、パ・リーグに続いて日本シリーズも制しました。

◇大リーグでも活躍を続けているんだね

 2017年はけがに苦しみましたが、それまでの実績が評価されて、プロ5年目・23歳で、球団側は大谷選手を大リーグの入札制度にかけました。全30球団が獲得を望むほど人気がありました。カリフォルニア州アナハイムに本拠地を持つエンゼルスで、18年からプレーしています。
 日本ハムの最終年には3億円近い年俸を得ていましたが、18~20年は1億円にも満たなかったとされています。しかし、21~22年までの年俸は2年間で総額約9億円と発表されました。23年には、自身で自由に他の球団とも交渉できるフリーエージェント(FA)権を獲得できます。獲得競争は過熱すると見られ、5年間で推定280億円などという、とんでもない契約内容が報道されてもいます。
 日本で活躍していたころとの最大の違いは体重増による「肉体改造」でしょう。大リーグの公式計測では95㌔㌘で、日本ハム時代と2㌔㌘しか違いませんが、対戦した選手が、少なくとも109㌔㌘はありそうだ、と話したといいます。実際に春先には102㌔㌘くらいまで増え、食事もアドバイスを得ながら調整しているといいます。大きなけがなく、パワーアップしたレベルを維持できている結果でしょう。

◇大リーグにはどのぐらい日本の選手がいるの?

 日本出身選手初の大リーガーは、今から57年前の1964年から2年間、サンフランシスコ・ジャイアンツにいた村上雅則投手です。それから31年後の95年に、野茂英雄投手がドジャースに入団。1本の安打も許さないノーヒット・ノーランを2回記録するなど123勝しました。
 イチロー選手は45歳の2019年まで活躍し、3089安打を記録しました。04年の1シーズンでの最多262安打は、いまだに破られていない大リーグ記録です。松井秀樹選手はヤンキース時代の09年に、大リーグの最高優勝を決めるワールドシリーズで優勝し、最優秀選手(MVP)を獲得しました。
 日本の大リーグ選手はこれまでに約60人いて、全30球団に在籍して出場を果たしました。現在は大谷選手のほか、ダルビッシュ有投手、前田健太投手、野手では筒香嘉智選手、秋山翔吾選手ら8人がいます。ほとんどがプロ野球界で活躍してから大リーグに挑戦しています。

◇二刀流はどれくらいすごいの?

 「野球は9人で行う競技」と言われますが、今の野球は10人出場する制度を採用しているのが主流です。それは「指名打者制度」で、投手は打席に入らず、代わりに打撃専門の選手を打順に入れます。大谷選手のエンゼルスが入るアメリカン・リーグ、それに日本で在籍した日本ハムが入るパ・リーグは指名打者制度を採用していますが、強制ではありません。大谷選手の活躍があまりにすばらしいので、エンゼルスも日本ハムも、あえて指名打者制度を使わず、打順に組み入れたことがあります。
 大リーグの二刀流で有名なのは、通算714本塁打のベーブ・ルースです。レッドソックスに在籍した1918年に13勝・11本塁打の2けた勝利・本塁打を記録しました。この時代、指名打者制度はありませんでした。103年ぶりの更新は惜しくも実現しませんでしたが、46本塁打はルースの4倍超え。「クインティプル」と呼ばれる投打混合の5部門の3けたマーク(138安打)、100打点、103得点=本塁を踏んだ回数、130と3分の1投球回、156奪三振)を史上初めて達成するなど、まさに「超人」の活躍ぶりです。

(2021年10月13日掲載毎日小学生新聞より)