Q コップに水を入れて、しばらく放っておくと、コップの内側にたくさん気泡が付くのはなぜですか。(神奈川県鎌倉市、小6)
圧力低下、水温上昇、気体溶けにくく
A よく見かける現象ですが、説明するには分子(その物質の性質を持った最小の粒)のレベルで解説する必要があります。武庫川女子大学付属中学・高校で長く理科を教えていた芝崎真光さんに教えてもらいました。
一般に水に空気などの気体が溶けるとき、溶ける気体の量は、次の二つのことに大きく影響を受けます。
一つ目は、水に接する気体の圧力です。接する気体の圧力が高いほど、その気体は水に溶けやすく、圧力が低いほど、溶けにくいのです。気体の圧力が高いということは、水面にぶつかる気体の分子の数が多いので、結果として、水中に飛び込む気体の分子の数が多くなるのです。
二つ目は、気体を溶かす水の温度が大きく影響します。水に溶ける気体の量は、温度が低いほどたくさん溶け込み、温度が高いほど溶ける量が少なくなります。
なぜでしょう。物質は、固体、液体、気体へと進むに従いエネルギーを多く持ちます。例えば、水分子どうしが結合している氷(固体)は熱せられると熱エネルギーを得て、そのエネルギーを使って水分子は運動を始め、自由に動き出し流動性のある水(液体)になります。液体の水はさらに熱せられると、より活発に動き水蒸気(気体)となるのです。
砂糖などの固体が水に溶けるときには、水の温度が高いほど砂糖分子どうしの結合が外れやすくなり、水に溶けやすく(混じりやすく)なるのです。
一方、酸素や窒素などの気体は、その分子一つ一つがバラバラになっていて、非常に活発に動いています。そんな気体は、エネルギーを奪われる方が水に溶けます。つまり気体は、エネルギーの少ない、温度の低い水に溶けやすくなるのです。固体が溶けるときと気体が溶けるときの一般的な違いは知っておくとよいですね。
これらの理由から、遠いところや、高いところまで運ぶために加圧され、地中の水道管を通ってきた温度の低い水道水には、比較的多くの気体が溶け込んでいます。
そして、この水がコップにくまれて時間がたつと、水道管内よりもずっと低い圧力のもとにおかれる上に、水の温度も室温にまで温められます。結果として、溶けていた空気は溶けきれなくなって、気体となって出てくるのです。
この時、この気体分子は表面張力により丸くなり小さな泡となります。その量は少ないので、本当に小さな泡になります。泡はコップの内壁の見えない傷などを核にして集まるので、内壁にくっつくのです。もちろん、泡が大きくなると、泡が水から受ける浮力の方が、泡と内壁との引力より大きくなるため、水面に向かって浮かび上がるのです。
(「疑問氷解Vol.6」より)