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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

甲子園球場100年【ニュース知りたいんジャー】

 阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)が今年、完成から100年を迎えます。高校野球の「聖地」として、プロ野球・阪神タイガースの本拠地としても数々の名勝負が繰り広げられてきた甲子園球場について、甲子園歴史館(同)の安部早依理さんに教えてもらったんジャー。【長尾真希子】


 ◇歴史が知りたい


 1915年に大阪府の豊中グラウンドで始まった全国中等学校優勝野球大会(現・全国高等学校野球選手権大会)は、17年から兵庫県の鳴尾球場へと場所を移しましたが、当時の市民の娯楽は野球だったため、あまりの人気に観客を収容しきれなくなりました。そこで新球場建設の話が浮上します。
 建設を進めたのは阪神電鉄の専務だった三崎省三さんでした。5万6000人収容のアメリカ、ニューヨーク・ジャイアンツ(当時)の本拠地をモデルに、後に阪神電鉄社長、阪神タイガースオーナーとなる野田誠三さんが設計。24年3月11日に工事が始まり、8月1日にオープンさせました。「わずか4か月半で完成できたのは、当時、雨が少なく、朝から晩まで工事をしたからだそうです。当時の写真には、牛がローラーを引く光景も写っています」と安部さんは教えてくれました。
 広さは両翼約110㍍、中堅119㍍。内野席を覆う大鉄傘を備え、5万人分の座席を含めた収容人員8万人の東洋一の大球場でした。「34年にアメリカ選抜チームの一員として来日したベーブ・ルース(野球の神様ともいわれる名選手)がグラウンドを見るなり『Too large(大きすぎるよ)』と驚いたというエピソードもあります」(安部さん)


 ◇名前の由来って?


 甲子園が完成した1924年は、暦の干支を構成する「十干」の最初の「甲」と十二支の最初の「子」が重なる縁起の良い年だったため「甲子園」と命名されました。野球以外の利用も考え「甲子園大運動場」と名付けられました。
 当時は、陸上競技やサッカー、スキーのジャンプ大会のほか歌舞伎公演なども開かれました。内野席と外野席の間にある「アルプススタンド」の下の空間には、体育館や温水プールが設けられていました。「ブルペンには、当時の窓の形が残っているなど、温水プールの面影が今もあります」と安部さん。今も12月には、アメリカンフットボールの学生日本一を決める「毎日甲子園ボウル」が開かれています。

ツタが壁を覆う、100周年を迎える阪神甲子園球場


 ◇戦争中はどうなっていた?


 「日焼けが気になる女性客を呼び込みたい」という考えから、1931年に、内野の大鉄傘をアルプススタンドまで延ばして設置していました。やがて第二次世界大戦が始まると、43年には、この大鉄傘が日本軍に提供するため取り外されてしまいました。グラウンドの使われ方は「イモを育てたり、戦車を並べた展覧会も開かれたりしていたそうです」と安部さんは説明します。
 敗戦後、45年には、球場がアメリカ軍に接収されて(取り上げられて)しまい、アメリカ軍の兵舎となりました。47年には、一部の接収が解除され、戦時中には中止されていた現在の選抜高校野球(センバツ)が復活。51年には、内野スタンドに大屋根「銀傘」も設置されました。2010年からは銀傘の上に太陽光パネルを設置し、環境にも配慮しています。


 ◇土はどうなっているの?


 甲子園球場といえば、すぐれた技術の「神整備」で有名な「阪神園芸」のグラウンドキーパーの存在が欠かせません。
 甲子園の土は、一番下には大きめの石、その上に砂利、さらに火山砂利を敷き、表面には、黒土と砂を混ぜた土を30㌢㍍ほどの厚さに盛って、雨が降っても水分を吸い込みやすくなるよう工夫されています。「黒土と砂は、グラウンドキーパーがその年の最もよい状態のものを選んでいるので、年によって変わります。シーズンオフの1月には毎年、土を掘り返して固め直すことで、水はけをよくしています」(安部さん)
 人工芝を採用する球場が多い中、甲子園の外野の芝が一年中、青々としているのは、春から秋、冬から春にかけて芝生の二毛作を実施しているから。安部さんは「世界一美しい球場だと思っています」と胸を張ります。


 ◇センバツも100年を迎えるの?


 18日に開幕するセンバツも、この春で創設100年を迎えます。第1回大会は1924年、愛知県名古屋市の山本球場で開かれました。42~46年は第二次世界大戦により中断したため、今回は第96回大会です。第2回大会から甲子園球場が会場となっています。

第2回大会 高松商との四国対決を制した松山商


 甲子園球場の隣にあり、歴史などが学べるミュージアム「甲子園歴史館」では4月7日まで「センバツ企画展2024 初優勝特集」が開かれています。「センバツ期間中は、本物の優勝旗も見られます」と安部さんは話しています。(2024年03月13日毎日小学生新聞より)