東京・大手町から神奈川・箱根の間を、10人の選手がたすきをつないで走る第100回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が来年1月2日から3日にかけて開かれます。記念大会となる100回大会です。箱根駅伝の歴史やコースを予習して、レースを楽しみましょう。【篠口純子】
◇いつ始まったの?
1920年に始まりました。「マラソンの父」として知られる金栗四三(1891~1983)らが開催に力を尽くしました。日本は12年のストックホルム・オリンピック(五輪)で初めて五輪に参加し、東京高等師範学校(現在の筑波大学)の学生だった金栗はマラソン代表で出場しました。しかし、レースの途中で熱射病になって棄権に終わり、「世界に通用するランナーを育てたい」との思いを強くしました。
17年に、東京が都に定められて50年を記念して、日本初の駅伝が京都―東京間で行われ、金栗はアンカーを務めました。大会は成功し、箱根駅伝を企画。大学に呼びかけ、早稲田、慶応、明治、東京高師の4校で第1回大会が開かれました。戦争で41年、42年、44~46年は中止されています。
◇どんなコースを走るの?
東京・大手町と神奈川・箱根の間を往復する、計10区間(往路107・5㌔㍍、復路109・6㌔㍍)です。
神奈川の鶴見中継所から戸塚中継所までの23・1㌔㍍は「花の2区」と呼ばれます。距離が長い上、中盤に高低差のある「権太坂」があり、ラスト3㌔㍍は上り下りが続きます。各校がエース選手を送り、多くのランナーを抜き去る「ごぼう抜き」が見られることが多い区間です。これまでの最多記録は、2009年の85回大会で日本大学のギタウ・ダニエルさんが達成した20人抜きです。
また、5区は「天下の険」とうたわれる箱根の山を駆け上がります。小田原中継所から箱根・芦ノ湖まで、高低差が800㍍以上ある過酷なコースです。区間記録を塗り替えるほどの選手は「山の神」と呼ばれます。05年の今井正人さん(順天堂大学)、09年の柏原竜二さん(東洋大学)、15年の神野大地さん(青山学院大学)が知られています。
◇出場校の選び方は?
関東学生陸上競技連盟に加盟している大学に出場資格があります。普段の年は21チームが出場します。前年の大会で10位までに入った大学(シード校)に加え、予選会の上位10校が選ばれます。予選会は、ハーフマラソン(21・0975㌔㍍)を一斉に走り、各校上位10人の合計タイムで争われます。残り1チームは関東学生連合で、予選会を通過できなかった大学から、上位者を中心に1校から1人を選びます。
100回を記念し、今大会に限り全国から参加可能となり、関東以外の11校を含む過去最多の57校が予選会に参加しました。しかし関東以外の大学は出場権を得られませんでした。今大会は23校が出場し、関東学生連合は出場しません。
◇涙の繰り上げスタートも
選手たちはスクールカラーのたすきをかけて走り、中継所で待つ次の走者へ渡します。先頭と一定以上の時間差がついた場合、前の区間の走者が中継所に到着する前に次の走者が出発する「繰り上げスタート」があります。繰り上げ時間は、先頭が通過してから、往路は区間により10分か15分。復路は全ての中継所で、20分以上遅れると繰り上げです。
その場合、黄色と白のしま柄の各校共通のたすきを使います(5、10区は各校のたすき)。あと数秒あれば間に合うというところで繰り上げスタートになり、涙する走者もいます。一本のたすきをつなぐドラマが繰り広げられます。
◇100回大会の見どころは
前大会王者の駒沢大学は、今大会も優勝が期待されます。選手層が厚く、安定した強さがあります。駒沢は10月の出雲全日本大学選抜駅伝競走、11月の全日本大学駅伝対校選手権大会を制しました。箱根駅伝も優勝し、史上初となる「2年連続大学駅伝3冠」を目指します。
原晋監督率いる青山学院大学は2015年の初優勝後、18年まで4連覇しました。19年は東海大学が初優勝しましたが、20~23年は青山学院と駒沢がしのぎを削っています。中央大学、国学院大学も上位争いが予想されます。(2023年11月29日毎日小学生新聞より)