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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

人口世界一のインド、どんな国?【ニュース知りたいんジャー】

 国連は4月、インドの人口が世界最多に達したとの推計を発表しました。長らく世界一だった中国を抜き去りました。高い経済成長でも注目されるこの国について調べてみました。【小山由宇】

◇国土や歴史は?

 国土は、日本の9倍の約328万平方㌔㍍で、世界7位です。首都はニューデリー。選挙で政権を選ぶ民主主義の国です。19世紀中ごろにイギリスの植民地支配が固まりましたが、1947年に独立しました。

 人口の8割がヒンズー教徒、14%がイスラム教徒です。仏教の教祖のブッダは紀元前564年(諸説あり)、インドとネパールの国境付近で生まれ、インドを中心に布教しました。しかし、今、仏教徒は少数派です。モディ首相らは、ヒンズー教が最も優れていると信じ、「イスラム差別」と批判されるような政策を次々と進めています。

 何千年も続く「カースト」と呼ばれる身分制度が根強く残っているのも特徴です。かつてはカーストごとに就ける仕事が限られ、貧富の差が広がる原因となりました。

◇なぜ中国を逆転した?

 国連によると、インドの4月末の人口は推計で14億2577万人です。2022年の約14億2600万人をピークに減り始めたとされる中国を抜いたとみられます。64年まで人口が増える見通しです。

 中国は1979年、1組の夫婦に子ども1人の出産しか認めない「一人っ子政策」を始めました。出生率(人口に占める、生まれる子どもの割合)が大きく下がり、2016年に政策を終えました。一方、インドも人口を抑える政策をしていますが、各州に任せていて、中国ほど出生率は減りませんでした。

 インドはコメ、小麦の生産がいずれも世界2位の農業大国で、巨大な人口を支えています。

◇経済成長もすごいの?

 人口が増えるにつれて、経済も大きく成長しています。2022年の国内総生産(GDP)は、アメリカ、中国、日本、ドイツに次ぐ5位ですが、27年に日本とドイツを抜いて3位になると予想されています。

 経済成長率は、14~18年度に6~8%台と高い水準でした。新型コロナの影響で20年度は落ち込みましたが、21年度は8・7%に回復しました。

 経済を引っ張るのは、IT(情報技術)産業です。ハイデラバードやベンガルールという都市に、IT企業が集まっています。ジェネリック(後発薬)と呼ばれる医薬品の輸出も盛んです。一方、製造業は小さな企業が多く、国際的には目立っていません。

◇仲がいい国は?

 旧ソ連(今のロシアなど)と親しい関係でしたが、今は状況に応じて組む相手を代える外交をしています。
 アメリカと、中国やロシアとの対立が激しくなっていますが、インドは中立的な立場です。中国との間には国境紛争がありましたが、決定的な対立にはなっていません。日本、アメリカ、オーストラリアと「クアッド」という連携の枠組みを作る一方で、中国を中心とした「上海協力機構」にも加わっています。
 日本やアメリカ、ヨーロッパの国々と異なり、ロシアに対する経済制裁にも参加していません。ロシア産の石油や天然ガスを安く買っているといわれています。
 近年は、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の存在感が大きくなっていますが、インドはその代表格です。

◇日本との関係は?

 日本は、中国に対抗するために、インドとの関係を強めようとしています。インドの日本に対する感情も良好で、新型コロナ禍前までは、両国首脳がほぼ毎年、互いに相手国を訪れていました。

 日本は、インドにとって世界最大の援助国(2021年)でもあります。ムンバイ-アーメダバード間の高速鉄道や、首都圏などの鉄道の整備を支援しています。

 ただ、両国間の貿易量はさほど多くありません。インドの輸出相手で日本は22位、輸入相手で日本は13位(ともに21年度)にとどまります。

 インド国内での新車販売が1位のスズキの子会社など、インドで活躍する会社もありますが、まだまだ日本企業はインドの経済成長を生かしているとはいえません。

(2023年05月31日毎日小学生新聞より)


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 ◇2022年の世界の人口(単位は人)
①中国 14.2億
②インド 14.1億
③アメリカ 3.3億
④インドネシア 2.7億
⑤パキスタン 2.3億
⑥ナイジェリア 2.1億
⑦ブラジル 2.1億
⑧バングラデシュ 1.7億
⑨ロシア 1.4億
⑩メキシコ 1.2億
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