Q 哺乳類のヒゲは何のためにあるの?(福島県田村市、小6)
センサーや皮膚の保護 動物によって異なる
A 東京都日野市にある多摩動物公園で動物解説員をしている植田彩容子さんに聞きました。
哺乳類の体にはたくさんの毛がありますが、そのうち口の周りに生えている毛のことをヒゲといいます。爪や角などと同じ、たんぱく質のケラチンなどでできています。ヒゲには毛根の周りに神経が通り、感覚感知機能を持つ触毛や皮膚を保護する被毛などがあります。動物が暮らす生活環境などによってヒゲの役割はさまざまです。
触毛のヒゲを生活の中で役立てている動物がいます。
例えば夜行性のトラです。トラはやぶの中では、獲物を見ることだけに集中して目を使いたいので、身の回りの障害物を調べるためにヒゲを使っています。木の枝などがヒゲの先にあたると、その感覚が毛根の周りにある神経に伝わり、「ここには木の枝がある」と判断して避けることができます。
キリンは、アカシアというトゲがある木の葉っぱを好み、口先でむしりながら食べています。ヒゲが触れることでトゲに刺されないように食べていると考えられています。
体にはあまり毛がないゾウにもヒゲがあります。しかし、ゾウのヒゲが感覚を持つ触毛なのか、口の周りの皮膚を守るための被毛なのかは分かっていません。
またヒトを含めたサルの仲間にとってのヒゲは、大人か子どもかを見分ける目印になることもあると考えられています。オランウータンのオスは、独り立ちする10歳前後からヒゲが生え始めます。サルによってはヒゲの長さや色などによってもてるなど、異性をひきつける「おしゃれ」としての意味があるとも考えられます。
「ヒゲがない哺乳類はイルカとクジラ類くらいです」と植田さんは話します。ミナミバンドウイルカは生まれたときに数本のヒゲのようなものが生えていますが、1週間くらいすると抜けてしまい毛穴だけが残るそうです。
同じように水中で生活するアシカやアザラシにはヒゲがいっぱいあるのにイルカやクジラ類にはない理由ははっきりしません。
【毎日小学生新聞編集部・大熊真里子】
*冒頭の写真は、顔の幅より長いヒゲが生えているユキヒョウ=東京都日野市の多摩動物公園で
(「疑問氷解 Vol.6(毎日小学生新聞)」より)