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高専に行こう!和歌山高専編

 高等専門学校。タイトルにある「高専」の正式名称です。ロボコンなどでその名前を聞いたことがあるかもしません。
高専は高等学校と同じく、中学校を卒業したひとが入学することができ、入学後は5年一貫教育(商船学科は5年6カ月)。一般科目と専門科目をバランスよく配置した教育課程により、エンジニアに必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身につけることができます。近年はこの高専のカリキュラムが海を越え「KOSEN」として東南アジアを中心に注目されています。
「高専に行こう!」では、実際に全国各地の高専の魅力や特徴などをレポートします。今回は和歌山高専を紹介!

 和歌山高専では、ブルーカーボン活動を行っています。「ブルーカーボン」とは、海(ブルー)の中に温室効果ガス(カーボン)を封じ込める仕組みで、主に光合成能力の高い「アマモ」という海草が活用されています。
 「アマモ」は、陸上から海中に生存域を移動させた生物で、種子によりその生息域を広げています。この「アマモ」の群生地である「アマモ場」は、もともと日本の沿岸に広く見られた沿岸環境で、海洋生物のゆりかごとして大事な機能をはたしていましたが、高度経済成長やそれに伴う港湾整備などにより、瞬く間に姿を消していきました。このため、日本の各地でアマモ場の保全活動が実施されており、各地域とも海洋教育や企業CSRの連携で継続しています。同校もその保全活動を実施しています。

 和歌山高専は、この課題に対して学生とともに取り組み、1年生から最終学年までの幅広い学生が実際の海に入り、実装的な研究を行っています。その活動の中で誕生したバイオセメントは、海砂と海洋バクテリアを主原料とした固形物で、海底で崩れたあとは海砂に戻るというエコな物質です。アマモ種子をこのバイオセメントに埋包し、海の中に設置することでアマモ場を養生するという方法でブルーカーボンの活動を展開しています。
 現在の課題は、発芽して生長したアマモを次の年まで維持することにあります。持続可能なアマモ場の創造には、アマモの定着が必須で、新しく目指す目標の一つとなっています。

 これらの取り組みは、きのくにジュニアドクター育成塾(科学技術振興機構支援事業)でも展開しており、実際に取り組んでいる高専生がシュノーケリングで小中学生をメンタリングしながら海中で生じているブルーカーボン、つまりアマモの光合成の様子や生物多様性の実際を観察しています。

 研究室の楠部真崇教授は、「治す術がわからない環境変動の現状を次の世代に皺寄せしないように、この取り組みを継続していくことしかできない。」と長期戦への志を学生に伝えています。この声に反応した学生達も、自分の志を持ちつつ日々の研究に取り組んでいますが、この活動に対する彼らの一体感や熱量は年々強くなり、卒業後も継続して関わる学生も出てきています。

 海辺に面した数少ない立地の和歌山高専。その恵まれた環境を最大限活用した社会実装の研究を展開しています。

【和歌山高専へのアクセス】
■バス
「御坊南海バス」印南線 学園前バス停で下車。
■車
和歌山方面から:御坊ICを降り、国道42号線に出て左折、和高専前交差点の信号を右折。
田辺方面から:印南ICを降り、国道42号線に出て右折、和高専前交差点の信号を左折。