花粉が飛ぶこの季節、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどで困っている人もいるのではないでしょうか。最近の調査では4割の人が花粉症という結果が出ていて、若い人にも増えています。「国民病」と言われる花粉症について学んでみましょう。【下桐実雅子】
◆花粉症って?
ウイルスや細菌などが鼻や目などから入ってくると、体を守るために外に出そうとします。この体の反応が必要以上に働くとアレルギーになります。体にとっては異物である花粉を外に出そうとして、くしゃみや鼻水、目のかゆみ、涙などの症状が強く出過ぎてしまうのです。
花粉症を起こす植物は、日本ではスギ花粉が代表的で、2月から4月ぐらいまで花粉が飛びます。スギ花粉は1㌢㍍にも満たない黄色い雄花の中に、平均40万個も詰まっています。雄花の芽は夏にできるので、夏に気温が高く日照時間が長いと、雄花がたくさんできて、花粉も多くなります。
4月に入り、スギ花粉は少なくなっていますが、ヒノキの花粉が増えています。今年のスギ・ヒノキの花粉の量は平年より少なく、飛ぶ量が少なかった昨年よりは多いという予測になっています。
◆スギ花粉が終われば一安心じゃないの?
日本ではスギ花粉に少し遅れて、ヒノキの花粉が飛び始めます。その後も、イネ科のカモガヤ、キク科のブタクサ、カバノキ科のハンノキなどの植物で症状が出る人もいます。花粉症は今の季節だけというわけではありません。
北海道ではスギ花粉は少ないですがシラカバが多く、その花粉でアレルギーを起こす人もいて、地域でも違いがあります。花粉症に詳しい元東邦大学薬学部教授の佐橋紀男さんは「都会の街路樹にたくさん植えられていて、最近特に多いケヤキやイチョウの花粉による花粉症なども増えていると考えられます」と話します。
花粉症の人が野菜や果物のアレルギーになることもあります。花粉に含まれる成分と、野菜や果物に含まれる成分のつくりが似ているため、食べると口の中がかゆくなるなどの症状を起こしてしまいます。
◆花粉症の人はどのぐらいいるの?
医師らが行った2019年の全国調査では、43%の人が何らかの花粉症をもっていました。1998年は20%、2008年は30%だったので、だんだんと増えています。
19年の調査でスギ花粉症の人は全体の39%でした。5~9歳でも30%の人がスギ花粉症でした。10~19歳になるとスギ花粉症の人は50%もいて、2人に1人にあたります。スギ以外の花粉症をもつ人も34%いました。他のどの年代よりも多く、若い人に特に増えていることが分かりました。
増えている理由はいろいろ言われていますが、飛ぶ花粉の量が増えていることが挙げられます。戦後の高度経済成長時代にスギやヒノキの木がたくさん植えられ、それらが成長し花粉を飛ばしています。このため、国の役所の林野庁はスギなどを伐採して木材として利用し、花粉の少ないスギを開発して植え替える取り組みを進めています。このほか、食生活や住まいなど生活環境の変化も、花粉症が増えている要因と考えられています。
◆新型コロナウイルスの感染が広がっているけど、花粉症対策はいつもと違うの?
花粉症対策では、原因となる花粉を避けることが一番です。花粉が多い日は外出を控え、花粉を室内に入れないことが大切です。いつもなら、花粉が多く飛ぶ時期は窓をなるべく開けないようにしますが、今は、コロナ対策で窓を開けて換気することが求められています。花粉症の患者さんにはつらいですが、専門家は「新型コロナが流行している地域ではコロナ対策が優先される」と話します。
このため、花粉症の人は、薬をきちんと使って症状を抑えることが、いつも以上に大切です。花粉症の症状で目や鼻がかゆくなると、つい手でこすってしまいがちですが、手にコロナウイルスが付いていたら感染する恐れがあります。また、くしゃみがたくさん出ると、コロナウイルスをもっていれば感染を広げる可能性もあります。
外出するときはマスクやめがねをしましょう。今はコロナ対策でマスクをしていることが多く、これは花粉症対策にもなります。
◆薬ってどんな種類があるの?
症状に合わせて、飲み薬や目薬、鼻にスプレーする薬などいろいろあります。最近は皮膚に貼るタイプの薬も出ています。
このほか、スギ花粉症を治すことを目指す治療法もあります。花粉の成分を体に少しずつ入れて慣らして、体質を変えていく方法です。以前は注射でしたが、今は口の中で溶ける薬)も出ていて、子どもにも使えるようになりました。 ただし、スギ花粉が飛んでいる今の時期は始めることができず、治療をする場合は夏休みや秋口に始めます。
子どもの花粉症に詳しい国立病院機構三重病院の医師、増田佐和子さんは「3~5年ぐらい続ける必要がありますが、使い始めて次の花粉の時期には効果が表れる子が多いです」と話します。子どもは入試や進学、その先には就職などがあり、早めに花粉症対策をすませておきたいと考える人には有力な治療の選択肢となるそうです。
(2021年4月7日「毎日小学生新聞」より)