世界一サッカーの強い国を決める「2022ワールドカップ(W杯)」が20日、中東の国カタールで開幕しました。今回は季節を特別にずらして行われます。中心会場のある首都ドーハは、日本のサッカー界と切っても切れない「深い縁」のある場所。22回目の大会で、日本はどう戦うのでしょうか?【上鵜瀬浄】
◇W杯の歴史を教えて!
92年前の1930年、初めて南アメリカのウルグアイで開かれました。4年に1度、夏季オリンピック(五輪)の間の年に開かれます。最初の大会には13チームが参加し、開催国のウルグアイが優勝しました。出場は1国1チームと決まっていますが、サッカーが始まった国・イギリスには、参加が認められている四つの地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)があります。
これまで21大会があり、優勝回数が最も多いのは、ブラジルの5回です。ブラジルは「サッカーの王様」と言われるペレをはじめ、最近ではネイマールら数々のヒーローを生んでいます。ドイツとイタリアが各4回で続きます。21世紀になって、2002年の日韓大会や10年の南アフリカ、今回のカタールなど、アジアやアフリカでも開かれるようになりましたが、優勝は南アメリカとヨーロッパ勢が譲りません。
◇W杯で日本の戦いぶりは?
日本が初出場したのは1998年フランス大会です。現在7大会連続で出場中です。最高はベスト16で3度記録しています。W杯の常連になれたのは、今回の開催地に由来する、「ドーハの悲劇」の悔しさがあったからこそです。
94年アメリカ大会への出場をあと一歩で逃した「ドーハの悲劇」は、93年のアジア最終予選で起きました。日本ではこの年、プロサッカーのJリーグが開幕。55歳になった今もなお現役の「キング・カズ」こと三浦知良選手、J1名古屋で監督をしている長谷川健太さんをはじめ、堂々たるメンバーで臨みました。勝てば初出場が決まる最終のイラク戦。終了間際にゴールを許し、引き分けで出場権を逃しました。当時の代表メンバーで、今回日本代表を率いる森保一監督は「(ドーハの悲劇を)ドーハの歓喜に変えたい」と意気込んでいます。
◇ドーハってどんなところ?
ドーハは石油がたくさん出るアラビア半島にあり、ペルシャ湾に突き出た国カタールの首都です。広さは秋田県とほぼ同じで、W杯では半径40㌔㍍以内に8会場を用意しています。W杯は、いつもはヨーロッパのプロサッカーリーグのシーズンが終わった6~7月に行われますが、ドーハは砂漠気候で、この時期には最高気温が50度近くにもなります。2019年9~10月にドーハで開催された世界選手権の女子マラソンでは、深夜の開催だったにもかかわらず、4割が棄権したほど、暑さが深刻です。一方、11~12月の平均気温は20~25度と比較的涼しいです。それでも、カタールでは会場のピッチに冷風を送る冷却システムを付ける予定です。新型コロナウイルスの感染拡大も心配ですが、今のところ来場制限はせず約120万人の観客を見込んでいます。
◇日本の期待選手は?
今回は新型コロナ感染による欠場なども考慮して、登録メンバーが通常より3人増えて26人になりました。ヨーロッパのリーグを舞台に活躍している選手を軸に代表選手が選ばれました。
今回のW杯出場を決めたアジア最終予選のオーストラリア戦でゴールを決め、9月のドイツ遠征でも得点を量産した三笘薫選手、スペインリーグでスター選手ぞろいのレアル・マドリードで出場経験がある21歳の久保建英選手、ドイツ1部リーグのフランクフルトで得点源として活躍する鎌田大地選手らが選出されました。
36歳のベテラン、長友佑都選手や34歳の吉田麻也選手も、堅い守りでゲームを作ります。W杯で活躍した中山雅史さん、稲本潤一さん、宮本恒靖さん、中田英寿さん、本田圭佑さんはその後、日本のサッカー界を支え、世界にはばたきました。今回はどんな選手が名を上げるか、楽しみですね。
◇対戦相手の特徴は?
32チームが4チームずつA~H組の八つに分かれ、総当たりでリーグ戦を戦います。勝ち点の多い上位2チームが決勝トーナメントに進みますが、日本が入ったE組は、最も厳しいとされています。ドイツは、「ブンデスリーガ」という人気プロ1部リーグがあり、W杯でこれまで4回優勝しました。
スペインも、10年の南アフリカ大会を制し、世界中のスター選手を集めて日本でも「リーガ・エスパニョーラ」の名で知られる「ラ・リーガ」があります。中央アメリカのコスタリカは14年ブラジル大会で、優勝経験のあるイタリアやウルグアイを破ってベスト8に入りました。いずれもベスト16が3回の日本より実績で上回ります。
日本の目標は、過去3度はね返されているベスト8。サッカーには、弱いと思われたチームが強いチームを倒す「ジャイアントキリング(番狂わせという意味の英語)」の言葉があります。ぜひ大舞台で力を見せてほしいものです。
(2022年11月16日毎日小学生新聞より)