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受信料が支える 公共放送NHK【ニュース知りたいんジャー】

日本全国どこでも見られ、ニュースや教育、バラエティーなど幅広い番組を放送するNHK。どんな組織なのでしょうか。知りたいんジャーが調べました。【長岡平助】


◇国が運営しているの?


 NHKの正式な名前は日本放送協会です。ローマ字で書いたときの「NIPPON HOSO KYOKAI」の頭文字三つを合わせた略称が、NHKです。
 日本の放送局は、大きく二つに分けられます。一つはコマーシャルなどの利益を経営の柱にする民間放送(民放)です。もう一つは、もうけを目的とせず、視聴者から集める受信料をもとに運営されるNHKです。
 NHKは全国に放送を行き渡らせ、豊かで良い番組放送を行うことなどを目的として、放送法という法律に基づいて作られた組織です。しかし、国が運営する「国営放送」ではありません。政府と一定の距離を取って中立性を保ちながら、社会全体のために放送する「公共放送」です。NHKが税金ではなく受信料で運営されている理由の一つとして、この中立性が挙げられます。
 NHKで最も力を持つ機関が「経営委員会」です。年間の予算やトップである会長を決めたり辞めさせたりできます。メンバーは委員長を含めて12人。国会の同意を得て内閣総理大臣が任命します。現在の会長は、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸さんです。

◇どれくらいの規模なの?

 NHKは1926年に、三つのラジオの放送局が一緒になって作られた「社団法人日本放送協会」が前身です。当時はテレビはなく、ラジオが放送の中心でした。そして第二次世界大戦(39~45年)後の50年に、現在の放送法に基づく組織としてスタートしました。
 NHKがテレビ放送を始めたのは、53年2月です。その後、テレビは急速に出回り、各家庭に置かれるようになりました。はじめは白黒だったものがカラーになったり、衛星放送が生まれたり、地上デジタル放送になったりなど技術も進みました。
 NHKは現在、地上デジタル放送の総合テレビ、Eテレ、衛星放送のBS1、BSプレミアム、BS4K、BS8Kと、ラジオの第1、第2、FMの放送をしています。海外向けの国際放送もあります。
 放送局は東京都渋谷区の放送センター(本部)を含め、国内各地に54局あり、アメリカなど世界に31の取材拠点があります。番組作りなどの予算は2022年度は6890億円で、ほとんどが受信料です。職員数は1万人を超えます(19年度)。またNHK出版やNHK交響楽団など、子会社や関係する会社・団体は24あります。


◇いろんな番組があるよね!


 NHKを代表する番組として、大河ドラマ、連続テレビ小説、紅白歌合戦が挙げられます。
 大河ドラマは、1963年に第1作「花の生涯」が始まり、現在放送中の「鎌倉殿の13人」は61作目にあたります。連続テレビ小説は、61年に始まった「娘と私」が第1作で、現在放送中の「舞いあがれ!」は107作目です。大みそか恒例の紅白歌合戦は、51年1月に正月のラジオ番組として始まりました。大みそかの中継が始まったのは53年からでした。今年で73回目になります。ちなみに、多くの子どもが幼いころに見ていた「おかあさんといっしょ」は59年に始まりました。
 これらの番組作りは受信料でまかなわれますが、NHKは各番組にどれだけお金がかかったか公表していません。ジャンルごとに、例えば大河ドラマを含むドラマは1話あたり1350万~7900万円などと目安を公開しています。ニュースなどの報道については目安も公表されていません。
 ただ一時期、いくつかの番組について、制作にかかったお金を公表していたことがありました。2008年度のNHKの資料によると、当時の大河ドラマ「篤姫」は1話あたり約5900万円でした。篤姫は全50話だったので、単純に計算すると30億円ほどかかったことになります。
 

◇見なくても受信料は払うの?


 受信料の支払いは、放送法で定められています。NHKの放送を受信できる設備を置いた人は、NHKを見ていなくても受信料を払わなければなりません。ここでいう設備とは、テレビの他に放送が見られる携帯電話やカーナビなども含むとされます。ラジオだけだと受信料は不要です。
 受信料は、衛星放送も見られる設備の場合、銀行引き落としやクレジット払いで現在2170円(2か月契約コースから計算。沖縄県を除く)です。契約は、お金のやりくりや生活を一緒にしている「世帯」ごとになります。豊かでない世帯や障害のある人などについては、受信料の全額免除や半額免除の制度があります。
 NHKの受信料収入は2021年度、6801億円でした。また受信料を払うべき世帯で、実際に払っている支払率は全国で80%でした。しかしNHKがこれまで集めておきながら、使い切れなかったお金(繰越剰余金)の総額は、今年度末に2000億円近くになります。利益を目的としない公共放送なのに、あまりに大きな額だと批判を集めました。そこでNHKは23年度に受信料の値下げを行うと発表しました。来年10月から、受信料は月額で1割ほど(125~270円)安くなります。


◇あんなに多くの番組が必要?


 NHKについては近年、公共放送の範囲を超えて大きくなりすぎているという批判があります。
 そこでNHKは、衛星放送の一つを2024年3月に削減すると発表しました。またラジオは今後、第1と第2を統合する予定です。加えてテレビを必要としない「テレビ離れ」が進む中、人口減などで受信料収入は今後減っていくことが予想されます。NHKは設備や番組制作費を減らすなどして、使うお金を減らしていく予定です。
 しかし不安は残ります。例えばNHKは20年に、地上デジタル放送で流した番組をスマートフォンなどで見られる「NHKプラス」を始めました。インターネット事業に使うお金は、22年度予算で約190億円です。放送法はネットについて、放送を補うためのやってもやらなくてもいい仕事としています。現在、ネットの位置付けをどうするか議論が続いていますが、拡大すると民放を脅かしかねません。また子会社や関連団体の多さなども指摘されています。
 加えて中立を保つためのシステムである受信料で成り立っていながら、中立を疑われることがしばしばあります。14年に会長になった籾井勝人さんは「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」などの問題発言が相次ぎました。また21年には、放送法で禁じられているのに、経営委員が個別の番組に口を挟んだのではないかという批判もありました。