大関っていったい何なの?
国技と言われ、日本の伝統文化でもある相撲。1500年以上前から続く相撲の魅力や素朴な疑問を、「大相撲中継」の編集長である北出幸一さんが答えてくれる「教えて編集長!」。今回のキーワードは「大関」です。
Q 編集長、力士はどうしたら大関に昇進できるの?
A 日本相撲協会の審判部がその力士を昇進させたいと思って「理事会を開いてください」と理事長にお願いして、理事会が審判部の考えを認めると、昇進が決まるんだよ。昇進の基準に明確な決まりはないけれど、三役(関脇、小結)での3場所合計の勝星が33勝が目安だと言われているんだ。つまり1場所で11勝、貴景勝は平成30年の九州場所優勝で13勝、初場所11勝、春場所10勝で合計34勝となって基準は満たしたんだよ。数字だけでなく相撲の内容も見られるんだ。過去には稀勢の里や豪栄道のように32勝でも昇進した例や、琴光喜のように34勝しても見送られた例もあるんだ。そのとき大関が何人いるかとか、番付が下の力士に負けた相撲の内容など、いろいろな要素が合わさって決まるんだ。そこには運命の巡り合わせを感じるよ。
Q 大関になると待遇は変わるの?
A まず給与が変わる。三役は月額180万円だけど、大関は月額250万円になって、一気に70万円アップするんだ。大企業の役員クラスの給与かな。両国国技館に場所入りするときも自家用車で乗り入れができるのは大関と横綱だけなんだ。巡業などの移動でも飛行機はファーストクラス、新幹線はグリーン車の座席となる点も大関以上の特権なんだよ。さらに土俵入りにつける化粧まわしの房に紫色を使えるのも大関からなんだ。
Q 編集長、その土俵入りなんだけど、ほかの幕内力士とは違うの?
A 化粧まわしの房には紫色が使える特権があるけど、土俵入りは以前と変わらないよ。ただ幕内土俵入りで大関はいちばん最後に土俵に上がることになるんだ。春場所後に大関に昇進した貴景勝は、春巡業で「新大関」と場内アナウンスされていちばん最後に土俵に上がっていたよ。白鵬も春場所後に大関に昇進したので、春巡業で「新大関白鵬」と紹介されたことがうれしかったと話してくれたことがあるよ。
Q 大関になったらいろんなイベントに出席するの?
A 日本相撲協会の看板力士になるので、いろいろな行事やイベントへの出席は、当然多くなるよ。貴景勝も出身地の兵庫県芦屋市の「芦屋ふるさと大使」になって自分が活躍することでふるさとを有名にしたいと張り切っていたよ。本場所でも初日と千秋楽の協会あいさつでは必ず土俵に上がるし。千秋楽の三役そろい踏みにも登場して土俵を盛り上げる役目があるんだ。
Q 編集長、大関になった力士が下に落ちることはあるの?
A 負け越しが続いたら、大関から関脇に陥落するんだよ。以前は3場所続けて負け越したら落ちることになっていたけれど、それでは甘すぎるという声が出て、昭和44年の名古屋場所から2場所続けて負け越したら落ちるようになったんだよ。関脇に落ちた翌場所に限って、10勝したら再び大関に返り咲けるようにもなったんだよ。貴景勝が平成31年春場所の千秋楽に栃ノ心に勝って10勝を挙げて大関昇進を決めたとき、敗れた栃ノ心は2場所続けて負け越して大関から陥落することが決まったんだ。大関の座が入れ替わる厳しい運命の1番だったんだよ。
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