4年に1度行われる統一地方選挙が始まりました。4月9日と23日の2回にわけて全国各地で投票があります。まちづくりなど身近な生活に関わる地方自治体(都道府県や市区町村)の首長や議員を決める大事な選挙。その仕組みや課題について調べてみたんジャー。【山田大輔】
◇どんな選挙なの?
1947年5月に日本国憲法が施行され、明治憲法にはなかった「地方自治」が生まれました。それまで官僚が務めていた知事なども、住民が選挙で選ぶことになりました。このため前の月の4月、当時アメリカの統治下だった沖縄県などを除く全自治体の首長・議員選挙を一斉に行ったのが、最初の統一地方選挙です。その後、首長・議員の任期に合わせて4年に1度行われ、今年は20回目です。
選挙の費用を節約しつつ、選挙への関心を高める目的で毎回、法律で日程を統一して行います。71年の第7回以降、投票は便利な日曜日になり、都道府県・政令市の「前半戦」と、市区町村の「後半戦」に分け、間に2週間おいています。選挙の種類によって選挙期間が違うので、同じ投票日になるよう、候補者が立候補を届け出て選挙が始まる「告示」の日をずらしています。今回は、道府県知事選が3月23日、政令市(都道府県並みの仕事をする大きな市)の市長選が同26日、道府県議と政令市議選が同31日に告示され、いずれも4月9日投開票です。一方、政令市以外の市長・市議選と東京の区議・区長選が同16日、町村長・町村議選が同18日告示で、ともに同23日投開票(一部は翌日開票)です。この日は衆議院と参議院で欠員が出た5選挙区の補欠選挙も一緒に行われます。
◇うちのまちは選挙ないけど?
首長は辞職や死亡、実刑判決や選挙違反などでの失職、住民が投票で解職する「リコール」など、いろいろな理由で4年間の任期途中に選挙になることがあります。議会も、住民のリコールや、議会の不信任決議を受けた首長によって、解散されることがあります。このため、統一の日程から外れる自治体は少しずつ増えます(逆に辞職などで統一の日程に戻る自治体もあります)。市町村が合併した時に選挙があり、日程から外れた自治体もあります。2011年の第17回では、直前の3月に東日本大震災が起き、選挙は困難だったため、岩手県知事選や岩手、宮城、福島3県の県議選と複数の市町村長・議員選、仙台市議選などが延期されました。
今回の統一地方選挙では、9知事選や6政令市長選など、全国計985の選挙があります。全自治体で首長・議員ともに選挙があるとすると、計3576選挙になりますが、その4分の1程度です。47都道府県で知事選があるのは2割、20政令市の市長選では3割にすぎず、首都の東京都では知事選も都議選もありません。ただ8割以上の道府県や政令市では議員選があるなど、全国規模で「民意」が表れる重要な日であることに、変わりありません。
◇投票へ行く人は多いよね?
選挙がいっぺんにあれば、投票に便利で、関心も高まりそうに思えます。しかし、投票率(有権者のうち投票をした人の割合)は下がり続け、関心が低いという結果になっています。最も身近な市区町村長選(政令市含む)は、全国平均で1951年の最高90・14%から、2019年の前回は過去最低の48・52%になりました。他の選挙でも同じ傾向で、道府県議選は前回最低の44・02%でした。
一方、立候補した人が定数(選挙で選ばれる人数)を超えず、投票せずに選挙が終わった「無投票当選」が増えています。前回、無投票当選した議員は1816人、市長は27人、町村長は55人に上りました。町村議選では過去最高の23・3%の議員が無投票当選し、道府県議選では39%の選挙区(今回は少し減って37%)が無投票でした。「自分たちの地域のことは、自分たちで決める」が自治の精神ですが、無投票では住民の考えが示せず、民意で選ばれていない人が自治体の運営や監視をすることに疑問の声もあります。
◇女性は増えているの?
前回の統一地方選挙では、どの選挙でも女性の平均投票率は男性を上回りました。女性の方が有権者の数も多く、投票に行った人は全国で、女性の方が男性より約30万人多くいました。
ところが、当選した人は知事や政令市長、区町村長でゼロ、他の市長は86人のうち6人、道府県議は全体の10%、市議は18%にすぎません。国の役所の総務省によると、前回無投票だった市区町村議会のうち3分の1以上は女性議員がゼロで、女性議員の少ない自治体は無投票が多い傾向でした。
女性候補者の当選率は道府県議で61%、市議や町村議で90%前後と高く、そもそも立候補する女性が少ないのです。女性議員の比率はわずかずつ上がる傾向ですが、子育てや介護などの負担が女性に偏っていて、男女が同等に担って議員や首長の仕事と両立できるようにする改革の遅れが背景にありそうです。共同通信のアンケートによると、男性の「育休」規定がある地方議会は全体の80%以上ですが、過去4年間に男性議員が育児などで欠席した例のある議会はわずか3%。また、委員会などをオンラインで開催したことのある議会は9%でした。
◇課題がありそうだね
投票できる年齢は2016年、20歳以上から18歳以上に下げられましたが、立候補できる年齢は25歳以上(知事と参議院議員は30歳以上)のままです。給料にあたる町村議の平均報酬は月に約22万円。他に収入がないと子育て世代の参加は大変です。また、本会議に車椅子で出席できるよう段差を解消した「バリアフリー」対応の議会は、共同通信のアンケートによると24%にとどまります。同じ納税者である外国人住民の参加もできません。さまざまな「壁」が無投票当選など「なり手不足」に表れている可能性もあります。
一方、地方は国政政党の重要な支持基盤です。「政党対決」となる選挙もあり、結果次第では岸田文雄総理大臣の支持率や、衆議院の解散・総選挙を巡るかけ引きに影響するという見方もあります。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と地方議員との関係も、今回の選挙で注目されそうです。
学校や病院、道路などを造り、水道やごみ処理といった公共サービスを運営するなど、生活に密着した仕事を扱う地方自治は「民主主義の学校」と言われます。統一地方選挙には、日本の民主主義の姿が映し出されています。
(2023年04月05日掲載毎日小学生新聞より)