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東日本大震災から11年 津波、避難は早く「より高く」【ニュース知りたいんジャー】

2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。地震の後の津波で家が流され、多くの人が亡くなりました。過去にも日本は何度も津波の被害に遭っています。津波とは、どんなものでしょうか。【篠口純子】

◇どれくらい大きい地震だったの?

 2011年3月11日午後2時46分、三陸沖を震源にマグニチュード9・0の地震が発生しました。これは日本の観測史上最大の地震でした。

 宮城県栗原市で最大震度7を記録し、北海道、東北地方から関東地方にかけての太平洋沿岸を津波が襲いました。特に被害が大きかったのは、岩手県・宮城県・福島県です。高さ10㍍を超える大津波が襲いました。災害関連死を含む死者・行方不明者は約2万2200人(21年3月現在)、約12万戸が全壊しました。阪神大震災(1995年)では犠牲者のほとんどが建物の倒壊や家具の転倒による圧死でしたが、東日本大震災では約90%が津波による水死でした。

◇津波はどうやって起きるの?

 海底下で大きな地震が起きると、海の底が沈んだり、盛り上がったりします。そのため海水が大きく上下し、巨大な波となって周りに広がっていきます。これが津波です。ふだんの波とは違い、海水全体が巨大な水のかたまりとなって押し寄せてきます。「津波の前には潮が引く」という言い伝えがありますが、必ずしもそうではありません。また、弱い地震でもゆっくり長い時間揺れると、大きな津波が起きることもあります。さらに、いったん波がひいても津波は繰り返し襲い、第1波よりも第2波、第3波の方が高いこともあります。

 1月に南太平洋のトンガ沖で海底火山が噴火し、約8000㌔㍍も離れた日本列島に高さ1㍍を超す津波をもたらしました。その原因の一つは、「衝撃波」だったと言われています。爆発によって生じた衝撃波が大気を伝わり、海の波の伝わる速さと一致する「共鳴」を起こし、日本に津波を発生させた可能性があります。


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◇津波の威力はどれくらい?

 津波は、水深が深いほど速くなる性質があり、水深4000~5000㍍の沖合では時速700~800㌔㍍とジェット機並みの速さで伝わります。沿岸に近づき水深が浅くなるにつれ速度は遅くなりますが、後からくる津波が次々と重なるので急激に高さが増します。遅くなるといっても時速35㌔㍍ぐらいと自動車並みの速度です。津波を見てから避難するのでは、間に合いません。

 高さ0.2~0.3㍍(20~30㌢㍍)程度の津波で、人は巻き込まれてしまうおそれがあります。ひざくらいの高さでも流れが速ければ非常に危険です。陸に押し寄せた波は海に戻る時、建物や漂流物を沖合に引きずり込みます。

◇どこへ避難すればいいの?

 気象庁は地震の発生から3分を目標に、大津波警報、津波警報、津波注意報を発表します。マグニチュード8を超えるような巨大地震の場合、地震の規模をすぐに求めることができないため、予想される津波の高さを「巨大」や「高い」という言葉で発表し、非常事態であることを伝えます。警報が発表されたら沿岸部や川沿いにいる人は、すぐに高台や避難ビルなどへ避難を始めることが重要です。東日本大震災では約30分後に津波が襲いました。

 津波は、地形によって高くなることもあります。地形の特徴を知り、「より遠く」ではなく「より高い」ところを目指して逃げることが大切です。ほとんどの自治体では、浸水が予想される区域や避難場所を示したハザードマップを提供しています。ハザードマップで、自宅や学校の周辺などで津波に襲われるおそれのある場所を確認しておきましょう。避難場所や避難経路を確認しながら、実際に歩いてみましょう。一人でいる時に地震が発生する場合もあります。家族と待ち合わせ場所や非常時の連絡方法などについて話し合っておきましょう。


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◇過去にも津波の被害はあった?

 日本は歴史上、何度も津波に襲われています。1896年の明治三陸地震では、津波によって約2万2000人が亡くなりました。1960年のチリ地震ではマグニチュード9・5の地震が南アメリカのチリ近海で発生し、津波が1日かけて三陸海岸まで押し寄せ、大きな被害が出ました。

 83年に秋田県沖で発生した日本海中部地震では、男鹿市の海岸に遠足に来ていた小学生13人が津波で亡くなりました。93年の北海道南西沖地震では、震源地に近い奥尻島に地震発生から2~3分後に津波が押し寄せたとみられます。
 海外では、2004年にインドネシア・スマトラ島アチェ州沖でマグニチュード9・1の大地震が発生し、インド洋沿岸に津波が押し寄せました。死者・行方不明者は計約23万人に上ります。

               (2022年03月09日掲載毎日小学生新聞より)