水族館の生き物が元気に暮らせるように、飼育環境を整え、健康管理をするのが飼育員です。すみだ水族館では昨年6月、同館初となるオットセイの赤ちゃんが誕生しました。その飼育を担当する中島有奈さんに話を聞きました。(「Newsがわかる2023年6月号」より、文章中の所属、肩書などは掲載当時のものです)
赤ちゃんの名前は「アテナ」です。オットセイの出産に立ち会うのは初めてでした。必死で産もうとする母親の姿と、おなかから出てこようとする赤ちゃんの生命力の強さに、「命の誕生ってすごい!」と心が震えました。産声を聞いた瞬間は、感動のあまり涙があふれました。
順調に成長し、展示エリアに出る練習も始めています。甘えん坊でかわいいですよ。毎日お世話できて幸せです。大人のオットセイは4頭います。与える魚はシシャモ、サンマ、ニシンなどですが、一頭一頭、好きな魚も、切り方の好みも違います。栄養バランスを考えつつ、それぞれの好みに合わせてごはんの準備をしています。
食べる量やフンの状態を観察し、体調に異常がないか常に気を配っています。けがや病気の場合に備え、普段からレントゲンなどの検査機器に慣れるトレーニングもしていますよ。

昨年6月に生まれたオットセイの赤ちゃん「アテナ」

アテナにごはんをあげる中島さん

ペンギンのごはんの前に打ち合わせをする中島さん(左端)
展示エリアにはペンギンが52羽います(4月現在)。一羽一羽の顔と名前、性格、好みまで、全て把握しています。ペンギンも人間と同じように個性豊か。カップルを見守るのも楽しいです。
岩場やプールは1時間に1回、こまめに掃除して、いつも清潔にしています。プールの深い部分は約3メートルあるので、潜水して掃除をします。昨年からペンギンの翼の識別バンドに記録装置を取り付け、1日の行動を記録する調査を始めました。夜間の過ごし方、季節や雌雄の違いで行動に変化があるのかなど、研究が進めば、よりよい飼育環境の実現につながるはずです。
ペンギンも3月に赤ちゃんが生まれました。名前は「ぽんず」。6月以降の展示プールデビューを目指して、バックヤードで元気に成長中です。皆さんもぜひアテナとぽんずに会いにきてくださいね。

ペンギンの赤ちゃん「ぽんず」(生後3日目)


取材・文:川久保美紀 写真:すみだ水族館提供