ブックガイド『不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲』

 ロシアのウクライナ侵攻を日本政府は厳しく批難し、各地で反戦デモが起きています。ロシアのミサイルは住宅地や病院も破壊しました。家族バラバラとなり他国へ逃げる女性や子どもたち、軍隊に志願する市民。国同士の戦争で苦しむのはいつも一般の人たちです。

 かつて日本も世界と大きな戦争をしました。77年前の3月10日に東京大空襲があり、米軍のB29爆撃機300機余が、浅草など東京の下町に無数の焼夷弾(しょういだん)を落とし、2時間で100万人が被災、10万人が亡くなりました。小中学生の皆さんも聞いたことがあるかもしれません。

 でも、被害の数字だけでは想像しきれない部分もあります。『不死鳥少年 アンディ・タケシの東京大空襲』は、14歳の少年を主人公に、東京大空襲までの数日間を描いた小説です。アメリカ人の父と日本人の母を持つ主人公のタケシは、軍需工場でいじめの標的にされます。タケシは日本のために戦うことを決意します。一方で、建築家になり日本とアメリカをつなぐ仕事がしたいという秘かな夢を抱き、空腹の日々に耐えています。

 父の国の空襲で、見慣れた街が焼き尽くされ、タケシはようやく思い知らされます。

「これが戦争か――」

 軍事教練や憲兵や貧しさや飢えなど、ほんとうの戦争じゃなかった、と。街道を津波のように迫りくる炎の壁。黒い煙にのみ込まれた人びとが折り重なった死体の山……怖ろしく感じる描写もありますが、「どれほど残酷でもこのテーマでは、死の諸相を避けることはできない」という著者の考えが反映されています。

 昔、母親から東京大空襲の体験を聞いた著者が、長い時間をかけ様々な史料を集め、祈りを込めて書いた新たな3.10の物語。タケシは勇気と知恵を振りしぼり、命を懸けて家族を守り抜きます。

 実際、自分の身に戦火が降りかかってから「これが戦争か!」と気づいてももう遅いでしょう。その前に経験者の証言や物語から学べることがたくさんあります。「NO WAR!」と言える国であり続けるために、ぜひ10代の皆さんに読み継いでもらいたいです。

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不死鳥少年

アンディ・タケシの東京大空襲

著者:石田衣良 出版社:毎日新聞出版 定価:935円

著者プロフィール

石田衣良(いしだ・いら)

1960年生まれ、東京都生まれ。広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。97年『池袋ウエストゲートパーク』(文藝春秋)でオール讀物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』(新潮社)で直木賞を受賞。2006年『眠れぬ真珠』(新潮社)で島清恋愛文学賞、2013年『北斗、ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。主な著書に『うつくしい子ども』『娼年』(集英社)『美丘』(KADOKAWA)『清く貧しく美しく』(新潮社)『炎上フェニックス 池袋ウエストパーク17』(文藝春秋)などがある。(本書プロフィールより)