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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクール・エコノミストWEB【東邦大学付属東邦編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東邦大学付属東邦を紹介。

社会が求める複合的視点と問う力を 理科とリベラルアーツがはぐくむ

<3つのポイント>

①実験重視の理科教育で、「問いを立てる力」をはぐくむ

②ハイレベルな「学問体験講座」で学問と社会のつながりを実感  

③リベラルアーツ型教育で、社会が求める複合的な視点を養う

実験を重視する理科教育とハイレベルな「学問体験講座」

 伝統的に約7割の生徒が理系を希望する東邦大学付属東邦。同校の理科は、学んだことを実験してみることで好奇心を刺激し、よりその学びへの興味をかき立てるのが特長だ。施設環境にも恵まれ、中学理科棟では3、高校では物理2、化学2、生物2と中高あわせて9つの実験室を備える。岡田美秀広報部長は、知識を得る→実験で試す→予想通りにならない→問いを立てるという繰り返しが、生徒たちの知識の定着を後押しすると言う。「実験で予想通りの結果が出なければ、なぜ?という新たな問いが生まれます。そこで生まれた疑問は疑問のままでもOK。その問いをエンジンにして、学びのループを止めないことが大切」と語る。

 同校の学びは教室の中だけに留まらない。好奇心や知識欲を刺激する「学問体験講座」では、東邦大学や他大学の協力を仰ぎ、最先端の研究実験や実習を体験する。コロナ禍の昨年は、東邦大学医学部で「感染予防を科学する」と題した講座を実施。医療現場で医師や看護師が着用する防護服の着脱を体験した生徒は、特殊な液体とブラックライトを使った実験で、ウイルス拡散を防ぐには着脱手順を守ることの重要性に気づく。ウイルス量を測定する実験では、スマホ画面に多くのウイルスがついていることを発見するなど、感染症予防の難しさを実感した。

学問体験講座「感染予防を科学する」

 ほかにもハイレベルな講座を多数開講。自らの手で薬を調合する薬学部の「漢方薬を作ってみよう」、ロボット製作やプログラミングを体験できる理学部情報科学科の「ロボットを作ってみよう」など内容は多岐に亘る。中高課程の学習は、生徒たちにとって社会にどうつながっているのかがわかりづらく、日々の学びがどうしても受け身の姿勢になりがち。少し背伸びをして、社会と密接に関わる大学の研究に触れることによって、知的好奇心が揺さぶられ、主体的な学びの原動力が培われていくのだ。

 現象の奥に潜む真理や法則を問い続け、学びの本質をとことん追求する同校の理科教育。その本格的な学びが「理系に強い東邦」と言われる所以なのかもしれない。

医療現場を疑似体験する「ブラックジャックセミナー」

 毎年、100名に近い生徒が医学部を志望する同校で、特に人気の高い学問体験講座が、「ブラックジャックセミナー」だ。これは医学部志望者に対して行われる外科の医療体験で、高1の希望者30名が東邦大学医療センター佐倉病院に赴き、内視鏡手術シミュレータを用いた手術体験や、電気メスで模擬皮膚を切開、縫合したりする実に本格的な内容だ。この講座を受講し、「外科医の仕事を実感することができた」「医師になりたいという思いがより強くなった」という感想も多く、実際に外科医を目指す参加者も数多い。しかし一方で、「手先が器用でないと外科医になるのは難しい」と感じる参加者もいる。「自分は外科医に向いてないから研究者を目指すという生徒がいてもいい。学問体験講座は、生徒の自分探しのツールであり、自らの裾野を形成する学びの一つなのです」(岡田部長)。