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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

強制せず、「仕掛け」で導く ディリーゴ英語教室代表・廣津留真理さん【やる気レシピ】

小学校から高校まで地元大分県の公立校。塾に通ったこともない。そんな娘が米国の名門ハーバード大に合格できたのはなぜか。母親の廣津留真理さんによると、そのかぎは「家庭学習」にあるという。秘訣(ひけつ)を聞きました。

――どんな家庭学習をしていたのですか?
◆娘は小さいころからリビングが学習の場でした。そのためにはいろんな「仕掛け」や「仕込み」が必要です。絵本を読む時も「読んであげるからこっちに来て」ではなく、勝手に親が読み出すんです。大事なのは楽しそうにすること。「何読んでるの?」って子どもが興味を示したら一緒に読む。あるいはテーブルに絵本をさりげなく置いておき、子どもが手に取ったら一緒にのぞいてみる。

――娘さんが4歳で英検3級を取得したのもリビング学習効果ですか。
◆そうです。リビングで突然、私が英語の本を声を出して読み始める。関心を示してきたら一緒に音読する。他にも英語の文章を書いた模造紙をリビングの壁に張っていました。それを、私が突然、ニコニコして読み始める。そうしていくうちに娘は勝手に英語の勉強をやり始めました。

――学校の宿題もリビングで?
◆宿題はプリント学習が多いですが、私は娘にまず「答え」を教えて空欄を埋めさせて暗記させていました。丸暗記すると「考える力」が身につかないのではないかと思うかもしれませんが、宿題の大半は基礎学力を問うもの。暗記するのが最も効率がいいし、「暗記脳」も養えます。考える力はそうしたベースがあってこそ身につくものです。

――親はどこまで関与すべきですか。
◆学習意欲は小4までに土台を作っておくことが大切です。そうすればあとは自分で勝手にやり始めると思っています。でも多くは逆で、中学受験のために小4から塾に行かせ始める。気になるのは子どもと「同化」しようとする親御さんが多いことです。「うちの子は数学ができない」と心配する親御さんがいますが、それは自身に苦手意識があるから子どもも苦手だろうと思い込んでいるのではないでしょうか。私が主宰する英語教室では、まず絵本の音読から始めますが、「うちの子はまだアルファベットの小文字もやっていないのですが……」と言ってくる親御さんがいます。ご自身が受けてきた「常識」にとらわれずに意識を変えてほしいです。

――英語力をつけるには。
◆リーディング(読む)とライティング(書く)が大切です。優先してほしいのはリーディング。声を出して音読することから始めるのを勧めます。言語の学習には「音」は必須です。英文はインターネット上にいくらでも載っています。英文記事でもいいので、たくさん読みまくって単語の意味が知りたくなったら辞書を引く。文法を知らなくても音読しているうちに自然と身につき、フレーズも覚えます。スピーキング(話す)とリスニング(聞く)の力も音読で補えます。

――単語の読み方を知らないとできないのでは。
◆その通りです。だから英単語の暗記がとても大切です。単語の意味がわかれば文法を知らなくても長文が読める。読めればいずれ書けるようになる。これからの時代は暗記力ではなく表現力が大事だと言われていますが、そもそも単語や語彙(ごい)を身につけていないと表現力も乏しくなります。
 私は毎年夏にハーバード大生を講師に招いて小中学生・高校生向けに英語のサマースクールを開いていますが、いつもハーバード大生の単語や語彙が豊富なことに驚かされます。彼らに聞くと、子どもの頃、親と本をよく読んだり、リビングで議論をしたり、という経験が多いですね。

――英単語の暗記はどうやってやればいいですか。
◆私の英語教室では、小学校の卒業までに英検準2級(高校中級程度)の英単語を覚えるのが標準ですが、やりかたはシンプルです。単語帳を使って1日20個、週5日で100個の単語を丸暗記するだけ。テストも書き取りもしません。重要なのは暗記した単語を使うこと。リビング学習でも十分できますので実践してみてください。【聞き手・三木陽介】(2020年12月15日付毎日新聞朝刊より)

■人物略歴
廣津留真理(ひろつる・まり)さん
早稲田大卒。2012年にディリーゴ英語教室を設立。家庭学習の指導経験を踏まえて確立した独自の「ひろつるメソッドⓇ」でこれまでに約1万人を指導。ハーバード大生を講師に招いた「サマースクール Summer in JAPAN」は14年に経済産業省「キャリア教育アワード」奨励賞。