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スクールエコノミスト2024 WEB【 女子美術大学付属中学校編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は女子美術大学付属中学校を紹介します。

互いに個性を認め合いながら伸びる。まるで留学しているような校風の学校

<注目ポイント>

①「好きを力に」「知性が感性を支える」が教育のモットー

②「型」にはめず、「個」を尊重。発想力や創造力を成長させる

③美術をきっかけに視野を広げ、社会と結び付く学びを実践

女子美はありのままでいられる学校

 創造的なアプローチで問題を解決する力を養う「STEAM教育」が注目を集める昨今、志願者数を伸ばし続けている女子美術大学付属中学校。人気の背景について、広報部主任の並木憲明教諭は「近年のビジネス界では〈ニーズ〉や〈ウォンツ〉を満たすだけでなく、越えることが求められています。ブレイクスルーという言葉もあるように、既存のものを一新するビジネスや商品、サービスが求められている。そうした社会変化もあり、デザイン思考やアート思考が重視されるようになりました。もう一つ、AIの急速な台頭もビジネス界に大きなインパクトを与えています。『オリジナリティや人間にしかできないこと=美術』という認識が広がったことが追い風となり、本校の教育に関心が寄せられるようになったことを感じています」と語る。

 社会のニーズに応じてものづくりをするデザイン思考、ゼロから自由な発想でものづくりをするアート思考。両者には「ものづくりを通じて人の心を動かす」という共通項がある。同校入学時に求められることは、技術よりも「絵を描くことが好き」「ものをつくることが好き」という気持ち。混じり気のない美術への情熱を尊重しながら、生徒一人ひとりが持つ発想力や独創性を、さらに豊かなものへと育て上げていく。

 「『個』が立っていることが、デザイン思考やアート思考の根幹にあるはず。画一化した環境では育ちにくいのではないでしょうか。本校は型にはめず、個々の生徒の『らしさ』を崩さず、相似形で大きく育てて行くイメージ」と並木教諭。このことは、今に限らず、同校が創立時から実践してきたことでもある。持ち前の『個』を充実させ、社会と渡り合う存在に育てる。これがデザイン思考やアート思考を養うことにもつながっていく。

 同校ならではの教育観は、校風にも現れている。生徒は互いにありのままの『個』の姿を受け入れ合い、尊敬し合う関係を築く。高3生が中2生の作品を観て『尊敬する、私には描けない絵だ』と言ったこともあった。ある有名俳優の卒業生は「まるで海外に留学しているような校風の学校」と称えたが、まさに女子美生らしさと言えるだろう。

互いに個性を認め合いながら伸びる。まるで留学しているような校風の学校

美術を介して世界や社会を実感する

 美大付属でありながら高校は普通科。「好きを力にする」「知性が感性を支える」というスローガンを掲げ、美術を基幹としながらも一般教育を行っている。生徒のアートに対する純粋な心の高まりは、世界へ視野を広げるきっかけにもなる。同校では美術を主軸とした海外研修制度が充実。高校生の希望者向けの「パリ、イル・ド・フランス美術研修旅行」、ローマからフィレンツェをたどる「イタリア美術研修旅行」がある。いずれも1週間ほど滞在し、美術館や史跡、世界遺産を鑑賞することで、現地の新旧の芸術や文化を間近に触れることができる。

 こうした学びにも表れているように、同校では、アートを世界や社会、歴史を知るための手掛かりにしながら、やがて美術の枠を越え、広く社会の事象を捉える視座を育んでいく。例えば、高3では「社会とわたし」をテーマとした絵画の制作に取り組む。社会科で学んだ時事問題の中から各々が題材を設定し、事前学習で理解を深めた上で、自らが感じたことや考えたことを表現。作品を通じて社会課題に対する自分なりの解決法を伝え、他者や社会とつながる重要性を体感する。