スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は東京電機大学中学校を紹介します。
想定外の出来事も柔軟に乗り越える。挑戦心と五感を鍛える体験重視の学び
<注目ポイント>
①教科学習も体験学習も実践重視。挑戦から五感を鍛える
②「見て・触って・やってみる」からこそ、理解できることがある
③自分の学力に合わせて挑戦を積み重ねる数学の「毎日プリント」
フィールドワークで感性を開く
東京電機大学中学校が大切にしていることは五感を鍛える体験だ。理科担当の磧谷和樹中学教頭は「どれだけデジタル技術が進化しようとも、外に出て季節や自然を感じたり、新たな物事に出会ったりと、リアルな世界で五感を使う体験が少なければ感性は鈍ってしまい、主体性や発想力も生まれてこない。五感を鍛える機会を多く提供し、生徒の心を耕していきたいと考えています」と語る。
その一環として、同校では教科の学習内容と連動させた体験学習を実施。中1の秋に野川見学会が行われる。1学期の理科で学んだ地学、社会で学んだ地形図の読み方や武蔵野台地の特徴などの学習内容を振り返りながら、国分寺駅をスタートし、都立野川公園までの約11㎞を散策する。道中には武蔵国分寺跡などの旧跡や国分寺崖線、崖線下の湧水群などがあり、学校近隣の歴史や自然をたっぷりと体感できるコースだ。
学外に活動の場を広げることで、生徒の探究心はますます湧き上がっていく。昆虫好きの生徒は、自分たちの生活圏内にもいろいろな生き物が生息していることに気づき、散策中に見つけた昆虫をじっくりと観察することも。自分の興味に従って、見学会に様々な楽しみ方で参加していることがうかがえる。
生徒は5、6人のグループで、配布された紙の地図だけを頼りに進む。スマホの使用は緊急連絡時のみ、地図アプリも使えない。中1の学年主任で数学担当の中田和樹教諭は「地図を読み違えれば目的地に着けず、迷子になる班もあります。ただ見方を変えればハプニングも体験の一つ。グループで解決策を話し合うなど、不測の事態への対応力を身につける機会にもなっています」と語る。
自ら動きながら、興味や関心を広げていく醍醐味を味わう経験は、中2の鎌倉見学会や奈良・京都修学旅行でも重ねていく。修学旅行の練習も兼ね、鎌倉見学会は班ごとにルートや交通手段を考えて行動。修学旅行の自主研修では、奈良駅から京都の宿泊先まで、自分たちで立てたプランに沿って巡る。
現実の事象と重ねて理論がイメージできる
同校伝統の理科教育でも五感で体感することを重視。「見て・触れて・やってみる」をコンセプトに、実践や体験を繰り返していく。「本などで見聞きし、知識として知っていた事象も、実験や観察で実際にやってみることで『本当にこうなるんだ!』と体感できれば、一気に理解が深まる。感性を刺激したい」と、磧谷教頭。それを象徴するものが、同校が誇る「実験BOX」だ。
中学生全員が各自所有し、実験道具や試料を保管する。実験道具は配布された材料から生徒自身が手作りし、壊れれば自分で修理しながら使い続ける。「自ら手を動かして作るからこそ、道具を大切に扱う気持ちが育まれ、ものの構造や仕組みも理解できます。なかには自分なりに工夫し、実験道具をより使いやすくアレンジを加える生徒もいます。新たな発見から創造に挑戦する姿勢は、まさに発明やものづくりの原点」と、磧谷教諭は語る。
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