スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は多摩大学目黒中学校を紹介します。
大切なのは自分の意思で選択すること。とにかく何かを始めてみよう!
<注目ポイント>
①自由選択プログラムで自発的に興味のある分野を極める
②豊富な国際プログラムで多様な価値観や考え方が体感できる
③学びの目的や熱意を学校全体で高める仕掛けが随所にある
経験から導き出した田村校長の教育目標
元・経済産業省のキャリア官僚という異色の経歴を持つ田村嘉浩校長。在職中、アメリカとロシアの大学に留学した際に日本の教育が抱える課題に気づき、強い危機感を抱いたという。各国から集まったエリートたちの高い目的意識と遂行力を目の当たりにする一方で、日本の留学生は明確な目的意識を持つ学生は少なかった。この経験から田村校長は「目的意識を持ち、目標に向かって研鑽を積める生徒を育てる」という教育目標を掲げ、学校教育に尽力することを決意した。
田村校長が注力したのは、夢中になれるものに巡り合うための仕掛けづくりだ。勉強、部活動、学校行事など、生徒が輝ける場を多数用意し、興味のあることを自ら見つけ、目標を定めて邁進する力を伸ばしていく。「興味の対象は生徒によってさまざま。全員一律の教育ではなく、個性や能力を最大限に引き出すことを目指したい」という思いから、多彩な体験型プログラムは「自由選択(希望参加制)」であることも大きな特徴だ。
9カ国への海外研修で世界の今を知る
国際教育にも力を入れている同校は、2024年度、高校の修学旅行先をこれまでの国内(九州)に加えて、ベトナムも選択できるようにした。ともに「平和学習」を盛り込んだ内容で、九州では被爆地の長崎や熊本地震の被災地などを巡り、ベトナムではベトナム戦争時に米軍が散布した枯葉剤の影響で結合双生児として生まれたグエン・ドクさんから話を聞くプログラムを組み込む予定だ。
また、韓国の済州島で開催されている各国の元首相や大学教授らが集まる世界平和フォーラムに参加する機会もある。この活動が縁となり、2024年1月に韓国の高校と協定を締結。今後、同校との交流が生まれる見込みだ。
「アジアは世界の中でも成長が著しく、躍動感のある地域。そのエネルギーを感じてもらえれば」と田村校長。今後、インドネシア・インド研修を予定するなど、アジア方面のプログラムを増やしていく方針だ。 留学・研修先はオーストラリア、イギリス、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、ベトナム、韓国、インドネシア、インドと、9カ国に広がる。「世界には多様な価値観や考え方があり、それらを理解するには背景の歴史や文化を知ることがとても大切です」と田村校長は語る。
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