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スクールエコノミスト2023 WEB【順天中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は順天中学校を紹介します。

子どもたちよ、町や世界に飛び出そう 秘めた能力を開花させるボランティア

<3つのポイント>

①「創造的学力」「国際対話力」「人間関係力」が教育の3本柱

②多彩なボランティア活動とリンクする「統合学習」

③課題発見・解決力、プレゼン力を育成する「探究学習」

自由参加型のゼミでの体験で学びの駆動力、原動力が生まれる

 創立188年を迎える伝統校である順天中学校。「英知をもって国際社会で活躍できる人間を育成する」という教育目標を掲げ、中高一貫教育を通じて「学び方と生き方」を大切にすることで、学力と人間性を育む教育活動を行っている。その柱となるのは、主体的に課題を発見し解決する「創造的学力」、グローバルな社会で求められる「国際対話力」、他者と協働するための「人間関係力」だ。

 教育面での最も大きな特徴といえるのが、ボランティア活動と連携した授業を展開していることだろう。約50年前、1人の若い教員が、感性豊かな生徒たちを東南アジアに引率し、社会問題について考える機会をつくったことから福祉教育がスタートした。以来、ボランティア活動と学習を連携させた教育理念が、今も脈々と受け継がれている。

 例えば、芸術・技家・保体・道徳の4教科をクロスカリキュラム化した「統合学習」では、課外活動のワークショップ、ボランティア活動とリンクさせることで、高度な統合学習を実現している。ワークショップは、発達段階にあわせてテーマが設定されている。

 例えば中1のテーマは「家族の絆」。過去には、保育園や高齢者施設を見学し、幼児の発育に合ったおもちゃや、高齢者のためのパズルなどを作って贈呈した。中2のテーマは「地域の絆」。地域ボランティアの指導を受け、障がい者問題について考える。美術の授業では、全盲の方に絵画作品を鑑賞してもらう目的で名画をレリーフで再現する活動も行っている。「人の役に立つ、人に喜ばれるという体験によって、自己肯定感が高まります。異世代と交流することで多様性を認め、社会性を身につけることもできるのです」と片倉敦副校長はその教育効果を語る。

 中3は、3年間の集大成となる年だ。「国際交流」をテーマに、短期留学や沖縄での平和・環境学習などを実施、最後はオリジナル動画を制作し、コンクールに出品する。

中3沖縄修学旅行での外来植物除去活動

課題発見・解決力を育む探究学習のなかでハイレベルなボランティア活動を展開

 中学課程での「統合学習」を経た後、高校でアカデミックスキルを育成するために行われるのが「探究学習」だ。自分で課題を探し仮説を立てて検証、プレゼンすることで、自ら思考する力を養う。学習の成果を発表する高2の3学期をゴールに設定し、研究を進めていく、大学のゼミのような授業形式だ。

 「探究学習」でもボランティア活動と結びついた社会貢献型の学習が展開されている。例えば高校課程の英語選抜類型Eクラスでは、カンボジアの小学校で英語を教えるなど、国際的な支援にもつながる活動が行われた。相手国の言葉を知る必要性を認識し、クメール語を学び始めるなど、生徒が主体的に課題や解決法を見出したのも、実践的な探究学習の成果といえるだろう。

 理数選抜類型Sクラスでは、実験を通して結論を導く探究学習を行っている。外部コンクールにも積極的に挑戦し、ミドリムシ(ユーグレナ)と大腸菌の捕食関係を探る研究は、神奈川大学のコンクールで入賞した。

 さらに、「セカンドハーベスト・ジャパン」と提携し、家庭で余っている食べ物を持ち寄って福祉団体などに寄付する「フードドライブ」も開始するなど、外郭団体とのコラボも実現。活動の幅が広がっている。

大学に進学した後もボランティア活動を継続

 順天で育まれた人間性や国際性は、大学進学後も生かされているという。例えば卒業後医大生となった3人は、ザンビアの無医村での診療所建設を支援する「ザンビアブリッジプロジェクト」を立ち上げている。

 生徒の約半数が国公立大学および難関私立大学へと入学する進学校だが、「偏差値でなく、いろんな物差しで多面的に評価することで、生徒たちは驚くような力を発揮します」と片倉副校長は強調する。順天での6年間は、まさに高い人間性に裏づけられた課題発見・解決力を育む場となっている。

(文/坂井彰代)

●学校データ

所在地       〒114-0022 東京都北区王子本町1-17-13

TEL        03-3908-2966

学校公式サイト   https://www.junten.ed.jp

海外進学支援    有

帰国生入試     有

アクセス

王子駅(JR・京浜東北線、東京メトロ南北線)徒歩5分

王子駅前駅(都電荒川線)徒歩5分

国内外大学合格実績(過去3年間)

東京、東京工業、東北、名古屋、大阪、九州、筑波、東京医科歯科、東京農工、東京海洋、電気通信、東京外国語、東京学芸、横浜国立、千葉、東京都立、慶應義塾、早稲田、上智、国際基督教、東京医科など