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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【立正大学付属立正中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は立正大学付属立正中学校を紹介します。

社会と教科学習をつなぐブリッジ 「R-プログラム」が導く教育効果

<3つのポイント>

① 社会のさまざまな課題を知り、思考を深めるR-プログラム

② 身近な「なぜ?」を大切に、社会のニーズに応える理科の視点

③ 探究心を持って調べ、自ら考え行動する力をはぐくむ

身近なテーマから社会問題へ 社会と学校を結ぶR-プログラム

 社会の実相に即した研究が行われる大学に比して、中学の学びは抽象的だ。その分、生の学習に向かう目的が得られにくいという一面がある。立正では、社会と学校との間に「R-プログラム」というブリッジを架けることによってこの問題に応える。

 R-プログラムとは、毎朝20分のショートホームルーム時に新聞記事やコラムを読み、自らの意見をまとめ発表する取り組みだ。中1〜高1まで4年間継続して行われる。

R-プログラムの発表の様子

 テーマは「いじめ」や「電車通学のマナー」などの身近な題材に始まり、徐々に「ジェンダー」や「環境問題」など俯瞰的なテーマへ発展。テーマの選定には、各学年の国語科を中心とする担当チームに、理科と社会科の教員が必ず参加し、自然科学や社会科学の視点を取り入れることを重視している。時に、表やグラフを用いたデータ分析も行うという。

 「中3ともなれば自らテーマを決めるクラスもあります」と話すのは、校長補佐の今田正利教諭だ。新聞を1週間読み、その中から興味を持った記事を紹介するというものだが、ただ闇雲に探すのではなくSDGs17の目標の中からテーマを1つ指定した。すると「雇用」や「人権問題」など、より社会性の高い記事が自発的に取り上げられるようになったという。「SDGsを切り口にすることで、生徒に新たな視点が生まれました。自分たちの将来と真剣に向き合い、考えを深める姿が見られます。自らの意見を発表したいという意欲も増し、グループディスカッションやクラスのディベート活動につながることもあります」。

 社会のさまざまな課題に触れながら、多様な視点をはぐくむR-プログラム。それが教科学習へと向かう土台作りにもなっているようだ。

身近な「なぜ」から始まる探究心 応用科学で社会のニーズに応える

 理科の松本陽介教諭は、R-プログラムと授業を連動させることもある。例えば「生物図鑑を作る」という課題を出した時、R-プログラムでは「外来生物法の規制緩和」という記事を取り上げた。本来禁止されているアメリカザリガニ等の特定外来生物の飼育を限定的に認めることで、放流を抑制し、日本の生態系を守るというニュースだ。「自分の好きな動植物について詳しく調べたばかりなので、最後まで全うする飼育法、生き物との共生、果てはアニマルセラピーまで活発な意見が出されました」。

 このように松本教諭はタイムリーな題材を選ぶだけでなく、なるべく身近な話題に引き寄せて考えさせることを重視する。「科学の探究心は、すべて身近な『なぜ?』から始まるからです。身の回りで不便を感じた時、そこにどうアプローチするか。例えば災害時、重たい物を人の手で運ぶ必要性から、筋肉の動きを補助するパワードスーツが開発されました。今では介護現場でも活用されています。社会のニーズに気づき、まだ誰も知らない答えを創り出すことこそ、応用科学の視点なのです」。R-プログラムは多くの「なぜ」をストックする取り組みでもある。またそれが、進学先の学部選択に大きく作用することもあるのだ。