【ニュースがわかる2025年1月号】楽しくあけよう パッケージ

スクールエコノミスト2023 WEB【 女子美術大学付属中学校編】

スクール・エコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は女子美術大学付属中学校を紹介します。

尊敬し合える環境での美術が個性を普通科課程の学習が知性を育む

<3つのポイント>

①「好きを力にする」「知性が感性を支える」が教育スローガン

②美術を題材に英語を学ぶ独自の授業「アート・イングリッシュ」

③リベラルアーツを重視し、全教科美術と関連づけたカリキュラム

独創性を競う生徒それぞれの個性を伸ばす

 日本で唯一の、美大付属の普通科学校である女子美術大学付属中学校(以下「女子美」)。「好きを力にする」「知性が感性を支える」という二つのスローガンを掲げ、美術を基幹とした教育を行っている。美術が好きで、個性的な生徒の多い同校は、自由な校風でも知られる。生徒たちに横並び意識はなく、同調圧力やいじめが起きにくい、個性や才能を伸ばすのに理想的な環境だ。

 近年、創造的なアプローチで問題を解決する力を養う「STEAM教育」が注目され、米大手IT企業が積極的に芸術家を採用している時代背景もあり、独創力、表現力を育める学校として、同校の受験者数も増加している。中学入学の際に求められるのは「技術」よりも「好き」という気持ちだ。「美術が本当に好きな子どもたちに受験してほしい」と並木憲明・広報部主任は語る。その好きは、やがて力となる「成長の種」として女子美が何より大切にしているものだ。

智の美、芸(わざ)の美、心の美を求める

すべての教科は美術につながる女子美オリジナルの英語教育

 「知性が感性を支える」ために不可欠なのが、幅広い知識と学力を身につけるリベラルアーツとしての一般教育だ。同校では、「すべての教科は美術につながる」をモットーに、各教科を美術につなげることで学習意欲を高めることに成功している。

 なかでも注目されるのが、オリジナルの教材を使って学ぶ「アート・イングリッシュ」。中学では文法やライティング、スピーキングを、画家や作品と関連づけることで楽しく学び、高校では専門的な美術の知識を英語で表現する力を養う。最終的には、英語で美術の知識を身に付け、グローバルに活躍できる女性の育成を目指す。

 例えば中1ではゴッホに手紙を書くことを通して、アートに関する単語やフレーズを学ぶ。中2では友人の作品を紹介することで、作品を描写するための知識を強化する。中3になると、自分の作品についての英語紹介に挑戦する。

 高1では「世界のアートについて話そう」がテーマとなる。ある時、印象派の画家たちが自分たちの展覧会を開こうとするシーンを台本にし、モネやルノワールになりきって寸劇を行うという課題が出された。すると1週間後、画家たちの人形を作り人形劇に仕立てたグループがあったという。生徒たちの発想力を引き出すきっかけにもなっているのだ。

 高2では、英語を使ったおもちゃの開発に挑戦。英語によるゲームアプリを開発した生徒もおり、創造の世界がどんどん広がっている。ゴールとなる高3の目標は、「英語による対話を通して作品を鑑賞する」こと。自分の作品について解説し、鑑賞者から質問を受ける対話型プレゼンテーションだ。芸術作品を通して英語で相手を理解し、自分を表現できるコミュニケーション力を養う。

 アート・イングリッシュの指導を担当する黒川路子教諭は、「学習を通じて、内容のある話を英語で話せる人になってほしい」と語る。英語の修得はもちろん、広い視野をもった、多面的な女性の育成を目指し、独自の取り組みが行われているのだ。