スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は三田国際学園中学校を紹介します。
多様性溢れたインターナショナルな環境で、サイエンス教育が生徒の能力を開花させる
<3つのポイント>
① オーストラリアの高卒資格も得られるインターナショナルクラス(IC)
② 基礎ゼミナールで創造性を育むインターナショナルサイエンスクラス(ISC)
③ 大学レベルの研究も可能なメディカルサイエンステクノロジークラス(MSTC)
1期生・2期生の生徒たちが国内外の難関大学に次々と合格
2015年の共学化から始まった三田国際学園の教育改革。大橋清貫学園長は大学合格実績を最終目的とした教育は行っていないと断りつつも「これまでの私たちの教育が実を結び、1期生、2期生ともに大きな成果を出してくれました」と語る。秋田・医、千葉・理をはじめ慶應義塾、早稲田、上智、国際基督教、東京理科などの国公立・難関私立大学に続々と合格者を出した1期生に続き、2期生も、東北・工、大阪・人間、九州・共創、北海道・水産、筑波・情報、などの難関国立大学に合格実績をつくった。特筆すべきは理系学部への進学者が多いことだ。また1期生では延べ20名の海外大学進学者を輩出し、カリフォルニア(デービス)、マンチェスター、台湾など才能を開花させた生徒たちが世界の大学へ飛び立っていった。こうした成果は、同校が追求する「世界標準の教育」が功を奏したのは言うまでもない。
インターナショナルな環境の中で、多様な思考力を育むサイエンス教育
三田国際の「世界標準の教育」でキーワードとなっているのが“THINK& ACT”“INTERNATIONAL”“SCIENCE”の3つ。同校の教育の根幹だ。
世界各国からの帰国生や外国人を親に持つ生徒、27名(2021年度)ものインターナショナル教員(IT)が在籍するキャンパスは、日常的に英語が飛び交い海外の学校のような環境になっている。こうした中で日々の会話を楽しみながら、一般生たちはさまざまなバックグラウンドを持つ国際生から多種多様な文化や「使える」英語を、国際生たちは日本語や日本文化を学ぶことができる。このように、同校では相互が刺激影響し合う日常の学校生活そのものが生きたインターナショナル教育の場となり、多様性を尊重する姿勢を育むのだ。
そうした環境の中で重視しているのが、英語教育を含む全クラスで実践している相互通行型授業。教員はファシリテーターとして〈疑問→仮説→検証→結論〉という論理的思考のプロセスをたどりながら授業を展開し、論点を整理して議論を導きつつ、生徒が自ら考えることを支援する。教員が質問・発問として投げかけるトリガークエスチョンは、生徒の知的好奇心を刺激するまさに「引き金」。こうしてクラス内に化学変化が引き起こされ、生徒の知的探究心や自由な発想が一段と喚起されていく。
そしてそれに並行して行われるのがサイエンス教育だ。生徒たちは入学すると全員が「サイエンスリテラシー」を履修する。ここで情報収集、文献の読解、レポートの執筆、プレゼンテーションの実施など学問分野を超え、幅広い視野からの科学的なアプローチや探究の作法を習得していく。
同校には博士号を持つ教員が5名(2021年度)在籍している。現役大学教員、理化学研究所研究員の経歴を持つ教員のほか、ITにも博士号取得者がいる。まさに第一線で活躍する研究者たちが生徒たちの伴走者として、サイエンス教育を推進。〈収集→分析→構築→表現〉という科学的アプローチに即して、「好奇心」を「探究」に変えていく学習を6年に亘って実践していく。同校で求められるのは知識の習得ではなく「考える」ことそのものなのだ。
今年度から6年間のロードマップが刷新された。クラス編成はインターナショナル教育、サイエンス教育を軸とし、入学時はインターナショナルクラス(IC)、インターナショナルサイエンスクラス(ISC)の2つに分かれる。さらに理科分野への意欲旺盛な生徒は入試形態やその後の選考を考慮し、中2段階でISCから、より専門性の高いメディカルサイエンステクノロジークラス(MSTC)を選択できる制度も用意した。こうしたクラス編によって、それぞれのサイエンス教育がさらに進化した形の学びへとブラッシュアップされている。
圧倒的な英語環境で、海外の高校卒業資格が取得できるIC
ICは、入学当初からAll Englishで主要科目(英数理社)の授業を行うAcademyと英語ゼロベースの生徒のImmersionの2つのグループに別れるが、恵まれた英語環境を活用して中3次には、全員が主要科目でAll Englishの授業を目指すという。さらに中2・中3次に、ITがそれぞれの学術専門分野をテーマに英語で探究するゼミナール型教育の「Academic Seminar」もスタートを予定している。
高校課程になると、日本や世界各地のさまざまな社会問題を学び、課題解決を目指す実践的プロジェクトに取り組む。そして高2のオーストラリア研修で、ローカルとグローバル双方の視点で社会課題を捉え解決策を導きだし、オーストラリアでも実践活動をする。こうした体験によって “地球市民”としての姿勢と実践力が養われていくのだ。
昨年には、西オーストラリア州の高校カリキュラムに則った授業を履修することで同州の高卒資格を取得するDDP(デュアルディプロマプログラム)がスタートした。他校のDDPとの違いは、三田国際にいながらにして修得可能だという点。高3次に受検するATAR試験のスコアにより、海外進学時に必要な英語資格やファウンデーションコースが多くのケースで免除されるなど海外大学進学希望者にとってはメリットが大きいといえよう。
今後は、ICの一般生と帰国生でペアを組むバディシステム、放課後のITとの英会話レッスン、CLIL(内容言語統合型学習)の導入なども予定している。
研究者たる姿勢で学ぶ「基礎ゼミナール」で可能性を広げるISC
ISCでは2年次からサイエンス教育として、「基礎ゼミナール」が始まる。研究グループは「言語と文学」「個人と社会」「メディアと人間」「実験科学」「数学とコンピュータ科学」など文理問わず幅広い。生徒たちは自ら選んだテーマを2年間研究することで、学問分野を超えた広い視野を持って教養・専門知を深め、論理的思考力を養うことができる。
高校課程になると、「Liberal Arts」がスタートする。これは「子どもの貧困」など自分の関心のあるテーマを選び、企業や大学、NPOなどと協働しながら海外研修と組み合わせて、フィールドワークを行い、課題解決に挑む取り組みだ。
こうした学びは実社会における課題を自分ごととして捉えるマインドセットを培い、実践力を育んでいく。
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