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【ニュースがわかる2024年5月号】巻頭特集は10代のための地政学入門

スクールエコノミストWEB【恵泉女学園中学校編】

スクールエコノミストは、私立中高一貫校の【最先進教育】の紹介を目的とした「12歳の学習デザインガイド」。今回は恵泉女学園中学校を紹介します。

世銀グループMIGA長官も輩出 社会に目を向け、深く考える力を養う

<3つのポイント>

① メディアリテラシー教育で、批評力や多角的思考力を養う

② さまざまな分野の講師を招いた講演で、社会との接点を発見

③ グローバルに活躍する卒業生が外交、医療などさまざまな分野で活躍

20年以上の歴史を持つ「メディアリテラシー教育」

 新聞や雑誌、テレビ、web、SNSなどでさまざまな情報が氾濫する現代。必要な情報を正しく活用するためには、情報を主体的、批評的に取捨選択し、分析する力が求められる。こうした能力を磨くため、国語科では20年以上前から中3にメディアリテラシー教育を展開。生徒たちが決めたテーマで賛成か反対かを議論するディベートでは、「高校生のアルバイトを認めるべきか」「制服を導入するべきか」「学園祭を2日間の開催に拡大するべきか」などを議題にして活発な議論が繰り広げられる。国語科の引地桂子教諭は、「取り上げるテーマは初歩的なトピックです。しかし自分たちとかけ離れた世界の問題は、ネットで得た知識の受け売りだけで真の議論が深まりにくい。生徒間の多様な意見をまとめ、具体的な対策に落とし込むには、身近な課題を俎上に載せ、他人事ではなく“自分事”として解決策を導き出す訓練が効果的」と話す。

メディアセンター

 2学期には学校を社会に見立て、グループごとに校内新聞を作成する。一人ひとりが記者となって教員や職員、保護者に取材して記事を書く中で、生徒たちは質問の仕方や見出しの付け方、コメントの取り上げ方などによって、記事の見せ方や読む側の印象が変わることを知る。また、新聞やテレビ報道を比較分析する授業では、ニュースには編集者の意図があることや、情報を鵜呑みにせず批評的に読み解く必要性などを学ぶ。「例えば虐待のニュース。これを見て被害者に寄り添う視点は大事。しかし一方で加害者の生い立ちや背景にまで目を向け、その犯罪を生み出した社会構造や課題をも思考できる人になってほしい」と引地教諭。この授業にはそんな信念も込められているのだ。

さまざまな分野の講師を招き「社会とのつながり」を学ぶ

 同校では、「社会問題に関する無知や無関心が結果的に人を傷つけることもある」という考えのもと、低学年のうちから社会を知り、多様な考えをインプットする。例えば読書を習慣づける「読書ノート」では、社会との接点を見つけるため、あえてノンフィクションのジャンルを強化。その後も新聞や岩波ブックレットを読んで社会への問題意識を高める。その集大成となるのが、社会で活躍する講師やOGによるさまざまな講演会だ。

 順天堂大学との高大連携の一環として実施された模擬授業や、恵泉OGでICU(国際基督教大学)で教える西村幹子教授の「SDGs時代の国際教育協力」というテーマの講演を実施。途上国での教育協力は現地での選択肢を増やすのか、逆に格差などの不平等を再生産するのかという難しい問いに、きれいごとだけではない国際協力の意義を深く考察する機会となった。また、東北大学のオンライン模擬授業では、OGの大学2年生が大学生活のリアルを紹介。さらに、外務省の駐タイ日本大使館員のOGは、外交官の仕事内容を詳しく解説。このように年代の近い先輩の活躍を目の当たりにすることで、在校生の主体的な学びの姿勢が培われていくという。

 本山早苗校長は「考える恵泉、生き方を考える進路指導という観点から、生徒一人ひとりが関心をもった分野を自主的に学んでいくことが最大の学びの動機づけ。恵泉ならではのネットワークを生かし、多様な学びの場を提供できるのが本校の強み」と胸を張る。